著者:中山七里


長崎県平戸沖に浮かぶ仁銘島。特徴的な島の形から「人面島」と呼ばれるその島の村長であり、島の大地主である鴇川行平が急死した。土地鑑定士である三津木六兵は、肩に寄生する人面瘡のジンさんと共に、遺産の整理のため、島を訪れる。だが、行平の二人の異母兄弟は対立し、しかも、その背後には宮司と漁業組合長という島の有力者が存在していて……
人面瘡探偵シリーズ第2作。
雰囲気は好き。でも……
冒頭に簡単に説明は書いたけれども、村の設定とか、そういうものは嫌いじゃない。
物語の舞台となる人面島。その大地主であり村長が死んで、ということは書いたのだけど、その他にも島そのものの設定には魅力的な部分がある。この島は、実は隠れキリシタンたちが長年隠れ住んでいた村で、神社というのも実は鳥居がキリスト教の十字架を模したもの。さらに、島のどこかには、その隠れキリシタンのたちの隠した財宝が隠されているらしい。だからこそ、村長の息子たちはどの土地が……とかを重視する。島の住人の多くは、村長・鴇川家の土地に住んでいるため、表面的には従っているが、その内心では色々と思うところがある。
さらに、村長の息子たちのバックにいる有力者の存在。長男と次男の間にある人間関係のトラブル。その中で、従妹同士だが仲の良い村長の孫たちの関係。この辺りの設定は、魅力的。そして、当然、その中で鴇川家の面々が次々と殺されて行って……と物語は進んでいく。
ただ、そういう魅力的な設定が十全に活かされているか、というと、正直「?」という感じ。
一応、密室殺人とか、そういうのも起きるのだけど、それほど大胆なトリックという感じではないし、隠れキリシタンとかそういう部分が活きているか、というとそこも弱く、犯人に関しても、限られた人数の中で自由に動けるのは誰か、と考えるとおのずとわかってしまう。設定に対して、肝心の謎解きとかがどうにも肩透かし気味。
前作『人面瘡探偵』の感想で、「三津木とジンさんのやりとりの面白さなどが作品を引っ張っている」と書いたのだけど、本作も印象としては同様かな。そういう意味では、ミステリー、謎解きというよりもキャラクター小説として楽しむ作品なのだろう、というのを再認識した。
あと最後に。物語の大筋には大した影響を及ぼさないのだけど、作中の法律の説明が大間違いなのは編集部も何か指摘しろ、とは思ったり。
No.6296

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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長崎県平戸沖に浮かぶ仁銘島。特徴的な島の形から「人面島」と呼ばれるその島の村長であり、島の大地主である鴇川行平が急死した。土地鑑定士である三津木六兵は、肩に寄生する人面瘡のジンさんと共に、遺産の整理のため、島を訪れる。だが、行平の二人の異母兄弟は対立し、しかも、その背後には宮司と漁業組合長という島の有力者が存在していて……
人面瘡探偵シリーズ第2作。
雰囲気は好き。でも……
冒頭に簡単に説明は書いたけれども、村の設定とか、そういうものは嫌いじゃない。
物語の舞台となる人面島。その大地主であり村長が死んで、ということは書いたのだけど、その他にも島そのものの設定には魅力的な部分がある。この島は、実は隠れキリシタンたちが長年隠れ住んでいた村で、神社というのも実は鳥居がキリスト教の十字架を模したもの。さらに、島のどこかには、その隠れキリシタンのたちの隠した財宝が隠されているらしい。だからこそ、村長の息子たちはどの土地が……とかを重視する。島の住人の多くは、村長・鴇川家の土地に住んでいるため、表面的には従っているが、その内心では色々と思うところがある。
さらに、村長の息子たちのバックにいる有力者の存在。長男と次男の間にある人間関係のトラブル。その中で、従妹同士だが仲の良い村長の孫たちの関係。この辺りの設定は、魅力的。そして、当然、その中で鴇川家の面々が次々と殺されて行って……と物語は進んでいく。
ただ、そういう魅力的な設定が十全に活かされているか、というと、正直「?」という感じ。
一応、密室殺人とか、そういうのも起きるのだけど、それほど大胆なトリックという感じではないし、隠れキリシタンとかそういう部分が活きているか、というとそこも弱く、犯人に関しても、限られた人数の中で自由に動けるのは誰か、と考えるとおのずとわかってしまう。設定に対して、肝心の謎解きとかがどうにも肩透かし気味。
前作『人面瘡探偵』の感想で、「三津木とジンさんのやりとりの面白さなどが作品を引っ張っている」と書いたのだけど、本作も印象としては同様かな。そういう意味では、ミステリー、謎解きというよりもキャラクター小説として楽しむ作品なのだろう、というのを再認識した。
あと最後に。物語の大筋には大した影響を及ぼさないのだけど、作中の法律の説明が大間違いなのは編集部も何か指摘しろ、とは思ったり。
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