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海鳥東月の『でたらめ』な事情2

著者:両生類かえる



「こ、こちら海鳥東月さんのお電話で、間違いないでしょうか?」 5月3日、ゴールデンウィーク。バイトを終えた海鳥の元へかかってきた電話の主。それは……。そのころ、家で海鳥の帰りを待つでたらめちゃんにも魔の手が迫っていた……
相変わらず、物語の導入のインパクトがすげぇ!
基本的に、「いや、それはおかしいだろ!」というところから始まるのだけど、その「おかしいだろ!」が当たり前に描かれるからこそ、むしろ受け入れてしまう、とでもいうか……
クラスメイトの鉛筆を盗み、それを削って「鉛筆がけご飯」を食べている、という異様な姿から始まる前巻。この巻では、その鉛筆を埋葬するところから。そして、一応、ネタバレになるけど、電話をかけてきたのは、その鉛筆の魂。そう、鉛筆たちの概念が意思を持つようになった結果。そんな状況に混乱しつつ、埋葬したはずの鉛筆を掘り出し、自宅に帰ると、そこには意識を失ったでたらめちゃんが……。一体、何が? と思う中、鉛筆、意識を失ったでたらめちゃん、共通点はどちらも「サラダ油」。しかも、そのサラダ油は、屋台で購入したもので……
と、前巻同様、各章、各章で意外過ぎる形で話に引きを作るので感想を書くというより、ひたすら粗筋を書いてしまうのはどうしよう……
ともかく、物語のカギが、海鳥にサラダ油を売った人間だ、ということをその人物を探す。そして、その「嘘殺し」をという風に展開していくことに。
1巻の時は、どこへ転がるのかわからない、という部分があったのに対し、今回は、「嘘」というものが何で、それを殺す、という意味では、前巻ほどのインパクトはないかもしれないけど、屋台でサラダ油を売っている。そのサラダ油にも意思があって……というのはそれでも引きとしては抜群。
その上で、今回は終始、でたらめちゃんが意識不明っていうのも大きい。今回の事件が嘘によって引き起こされたことは明らかなのだけど、その嘘をどうすべきか、という司令塔たるでたらめちゃん不在で、前巻では海鳥たちの敵であった敗が加わることに。しかし、当然、意思疎通とかには問題があり、上手くいかないことも。その中でのやりとりとかは素直に楽しかった。
嘘を巡って、敵対する組織とかも出てきたし、1巻のインパクトのある引きを残しつつ、物語の世界観を広げた、ということになるのかな? しかも、あえてキーパーソンたるでたらめちゃんを不在にするとか、細かな部分での描き方のうまさ、というのも印象に残った。

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