著者:辻堂ゆめ


2015年2月。大手企業に勤める桐谷雅樹は、渋谷で起きた強盗殺人の容疑者として突如、逮捕されてしまう。凶器が購入された家電量販店の防犯カメラには自分自身の姿。そして、現場から採取されたDNAも一致。さらには現場近くでの目撃証言も……。自分はやっていない。自分自身に対する疑惑を覚える中、アリバイが証明されるのだが……
内容紹介では「冤罪ミステリ」とあるけど、冤罪に関する話は前半で終わってしまう。
もうちょっと粗筋を続けると、アリバイが証明され釈放された雅樹。しかし、世間の疑いは晴れず、会社からは遠回しに退職を催促される。そして、なぜ、このようなことが? もしかしたら自分には双子の兄弟が? 口の重い両親に黙り、戸籍などを調べると本当に双子の弟がおり、彼はアメリカに養子に出されたことが判明する。その弟が? そう思った矢先・アメリカに行ったはずの弟・ジェイクと、その通訳・ナガノに拉致されてしまう……
という感じなので、事件の大まかな構造というのは前半に終わり、その後は弟であるジェイク、その通訳であるナガノとのやりとりが中心に。
渋谷で起きた強盗事件は、弟とナガノによるもの。現場からは2000万円が奪われた、と言われるものの金があるようには見えない。そして、雅樹を拉致した二人は、雅樹に引越しをさせ、さらに携帯電話も解約、新規購入をさせるなど、その痕跡を消す工作を始める。ある計画のための方策だというが、その計画とはいったい何なのか? なぜか、ジェイクに対する日本語の教育などをさせられながら、そんなことを考えるのだが……
計画が何なのかわからない。拉致はされたものの、危害を加えられる様子はない。単なる仲間というには不可解なジェイクとナガノの関係。疑惑を感じつつも、ジェイクとの間で育まれていく絆。そして、なぜか計画を止めるという言葉が出て……。
雅樹とジェイクのやり取りの中で出てくる国際養子の問題。日本における養子制度の遅れと、アメリカの地に未だ強く残る人種差別。そして、そういう部分が人生そのものに大きな影響を与える。日本でもそうなりつつあるが、アメリカでは……。そういう社会問題をはらんだ話をしつつ、雅樹のあずかり知らぬところで進行し、いつの間にか中止になっていた計画の真実……。
ちょっとしたやり取りの中に隠されていた嘘。何となくその通りだと思っていたことが実は嘘。その辺りのスリリングさ。そして、計画の開始段階はかなり強引に感じる部分はあるけど、第一段階さえ超えてしまえば、実は現実に出来そう。その辺りのバランスも面白かった。
No.6307

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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もうちょっと粗筋を続けると、アリバイが証明され釈放された雅樹。しかし、世間の疑いは晴れず、会社からは遠回しに退職を催促される。そして、なぜ、このようなことが? もしかしたら自分には双子の兄弟が? 口の重い両親に黙り、戸籍などを調べると本当に双子の弟がおり、彼はアメリカに養子に出されたことが判明する。その弟が? そう思った矢先・アメリカに行ったはずの弟・ジェイクと、その通訳・ナガノに拉致されてしまう……
という感じなので、事件の大まかな構造というのは前半に終わり、その後は弟であるジェイク、その通訳であるナガノとのやりとりが中心に。
渋谷で起きた強盗事件は、弟とナガノによるもの。現場からは2000万円が奪われた、と言われるものの金があるようには見えない。そして、雅樹を拉致した二人は、雅樹に引越しをさせ、さらに携帯電話も解約、新規購入をさせるなど、その痕跡を消す工作を始める。ある計画のための方策だというが、その計画とはいったい何なのか? なぜか、ジェイクに対する日本語の教育などをさせられながら、そんなことを考えるのだが……
計画が何なのかわからない。拉致はされたものの、危害を加えられる様子はない。単なる仲間というには不可解なジェイクとナガノの関係。疑惑を感じつつも、ジェイクとの間で育まれていく絆。そして、なぜか計画を止めるという言葉が出て……。
雅樹とジェイクのやり取りの中で出てくる国際養子の問題。日本における養子制度の遅れと、アメリカの地に未だ強く残る人種差別。そして、そういう部分が人生そのものに大きな影響を与える。日本でもそうなりつつあるが、アメリカでは……。そういう社会問題をはらんだ話をしつつ、雅樹のあずかり知らぬところで進行し、いつの間にか中止になっていた計画の真実……。
ちょっとしたやり取りの中に隠されていた嘘。何となくその通りだと思っていたことが実は嘘。その辺りのスリリングさ。そして、計画の開始段階はかなり強引に感じる部分はあるけど、第一段階さえ超えてしまえば、実は現実に出来そう。その辺りのバランスも面白かった。
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