著者:降田天


ミス続きのバイト店員。そんな店員に厳しく接した結果、彼女は自殺未遂を起こしてしまった。周囲からの冷たい目。店長である野中は、自分を絶望に突き落とされていた。そんなとき、老婆から渡されたのは「有限会社さんず Suicide Support Service」と書かれたカードで……
各章にタイトルなどは記されていないのだけど、第1話から第5話までで、別の主人公となる連作短編。
冒頭に書いた粗筋は第1話なのだけど、まず、このエピソードが強烈。冒頭の流れで渡されたカードの会社は、死にたいが死にきれない人に、自殺のサポートをする業務。野中は、依頼をし、「未練を残さない」ためにある行動をとるが……。スガと、カトウという二人の圧倒的な調査能力と、その中で導かれるようにある計画を立てることになるが……。テンポの速い展開。そして……のひっくり返し。正直なところ、このエピソードについては野中の側の思いもわからないではない、という部分もあるのだけど。
第3話。病に侵され、死を選ぶことにした西沢。そんな彼は、自らのコレクションである蝶の標本を譲り受けてくれる相手を探してほしいという。だが、その条件には奇妙なものが含まれていて……。例えば、博物館のように公開することを基本とする場所はNG。こういうのはわからないではない。だが、なぜか野球経験者とか、容姿が優れている、なんていう謎の条件が。そんな中、その条件に完全に一致するわけではないが、大体の条件を備えた候補者が集められるが……。西沢の過去。彼が抱えた後悔。それらが明らかになって……。この作品集の中では、一番、綺麗なエピソードかな、という風に感じる。
で、そんな各エピソードの中で、自殺幇助を業務としているにもかかわらず、それを制止しようすることもあったスガ。そんな彼の過去が明らかになる第5話。スガにとって大きな影響を与えた姉の存在。そして、「さんず」という会社の秘密……
正直、全体として淡々とした雰囲気があり、それぞれのエピソード自体も後味が悪かったり、すっきりしなかったり、というのはある。ただ、著者の作品自体がそういう感じなので、これまでも何作か読んだ身として、それを踏まえて読み進める感じになった。基本的に、この「さんず」という会社自体が悪趣味の極みだし。ただ、その中で第1話のひっくり返しとか、第3話の比較的、すっきりとした終わり方を楽しむことができた。
No.6309

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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冒頭に書いた粗筋は第1話なのだけど、まず、このエピソードが強烈。冒頭の流れで渡されたカードの会社は、死にたいが死にきれない人に、自殺のサポートをする業務。野中は、依頼をし、「未練を残さない」ためにある行動をとるが……。スガと、カトウという二人の圧倒的な調査能力と、その中で導かれるようにある計画を立てることになるが……。テンポの速い展開。そして……のひっくり返し。正直なところ、このエピソードについては野中の側の思いもわからないではない、という部分もあるのだけど。
第3話。病に侵され、死を選ぶことにした西沢。そんな彼は、自らのコレクションである蝶の標本を譲り受けてくれる相手を探してほしいという。だが、その条件には奇妙なものが含まれていて……。例えば、博物館のように公開することを基本とする場所はNG。こういうのはわからないではない。だが、なぜか野球経験者とか、容姿が優れている、なんていう謎の条件が。そんな中、その条件に完全に一致するわけではないが、大体の条件を備えた候補者が集められるが……。西沢の過去。彼が抱えた後悔。それらが明らかになって……。この作品集の中では、一番、綺麗なエピソードかな、という風に感じる。
で、そんな各エピソードの中で、自殺幇助を業務としているにもかかわらず、それを制止しようすることもあったスガ。そんな彼の過去が明らかになる第5話。スガにとって大きな影響を与えた姉の存在。そして、「さんず」という会社の秘密……
正直、全体として淡々とした雰囲気があり、それぞれのエピソード自体も後味が悪かったり、すっきりしなかったり、というのはある。ただ、著者の作品自体がそういう感じなので、これまでも何作か読んだ身として、それを踏まえて読み進める感じになった。基本的に、この「さんず」という会社自体が悪趣味の極みだし。ただ、その中で第1話のひっくり返しとか、第3話の比較的、すっきりとした終わり方を楽しむことができた。
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