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わたしはあなたの涙になりたい

著者:四季大雅



全身が塩に変わり崩れていく奇病「塩化病」。その病で母を喪った少年・三枝八雲はひとりの少女・五十嵐揺月と出会う。天才的なピアノ奏者である彼女の、ピアノに対する真摯な思いと、しかし、いじめっ子を軽くひねり上げる奔放さに八雲は惹かれていく。高校に上がり、海外留学をした彼女との差を痛感する八雲は、小説を書きはじめるが……
第16回小学館ライトノベル大賞・大賞受賞作。
塩化病というファンタジー要素はあるものの、作風としてはライトノベルレーベルの作品というよりも丁寧な青春小説、恋愛小説という印象。しかも、著者自身も体験したであろう現実の事件も一つの題材となっているだけに。
物語は小学校時代の二人の出会いから、両者が成人するまでという長期の時間軸で綴られる。話の粗筋は冒頭に書いた通りだし、その後の展開についても決して、意表を突いた展開とか、そういうわけではない。でも、読ませる。そういう作品だな、と感じる。
とにかく、主人公・八雲の感情というのが活き活き……というよりも、生々しく描かれているから、だと思う。他者に対する共感性が高く、そんな彼だからこそ、母の病、死に傷つき、そんなところで揺月に出会い、その姿に惹かれていく。しかし、彼は小学生であり、まだ彼女の抱えている悩みに気づかずに傷つけることも。そんな中での八雲の挑戦。挫折。一方での彼が揺月、友人に与えていた影響も……。丁寧な描写、八雲の性格が丁寧なだけに、その描写が心に響く。
そして、物語の後半は、そんな八雲と揺月が再会。しかし、揺月は……
この展開も、ある意味ではお約束と言えるかも知れない。それでも……、いや、だからこそ、そこまでのアレコレ。そして、揺月の想い、というのが痛烈に響いてくる。
正直なところ、この作品、感想を書きづらかった。いや、すごく良い作品であるのは間違いない。間違いないのだけど、丁寧な描写とか、そういうのって読んでみて初めて分かるものだから。なので、読んでみて、としか言えない。

No.6313

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Tag:小説感想ガガガ文庫四季大雅

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