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六法推理

著者:五十嵐律人



学園祭で賑わう霞山大学。その喧騒の中、経済学部3年の戸賀夏倫はキャンパスの片隅にある無料法律相談所(無法律)を訪れる。法学部4年の古城行成に依頼するのは、彼女のが住んでいるアパートで起きている出来事の解明。かつて妊娠中の女子大生が死亡し、最近は赤ん坊の泣き声が聞こえたり、真っ赤な手形で現れる、という出来事が起きているというのだが……(『六法推理』)
から始まる連作短編集。全5編を収録。
今回は、大学生で法律には詳しいけれども弁護士などではない古城が、相談に対して法律的な面から推理をする。しかし、最後の最後でちょっと間違えていて、最終的には押しかけ助手的な夏倫が、という形で物語が進んでいく。
物語として、法律に関する蘊蓄とか、そういうものは出てくるのだけど最終的には、そこではなく、という感じのエピソードが印象的かな? 例えば、冒頭に書いた1編目。事故物件というものの定義。告知義務。そういうものを考えた際に浮かび上がる疑問……から始まるのだけど、自殺した学生の現場にあった違和感。そして、自殺した学生が言っていた「救い」の意味……。最終的には法律論へ戻るのだけど、表面的な話だけでわからない謎が印象的だった。
展開として面白かったのは2編目『情報刺青』。WEB上で活動をする暮葉に対するリベンジポルノが投稿された。その中で、彼女が取ったのは? 一度広まってしまえば、完全に消し去ることができないというそういう動画。それにどう対処するのか? という部分と、しかし、やはり配信者。視聴者を広めたい、という欲望もある。その中での、暮葉が取ったある意味、捨て身の作戦というのが印象的。
逆に、法廷闘争というのが題材の3編目『安楽椅子弁護』。学園祭実行委員で起きた火災。そこで大怪我をした学生が、委員会を相手に訴訟を。しかも、事故とされていたものを放火事件だ、として。最初に書いたように法律知識はあるが、弁護士ではない古城。本人訴訟で、そのブレーンとして参加していたが……。いろいろな疑惑などが湧き上がるが、最終的には……。知識があっても……そういうちょっと後味の悪い結末が印象的。
法律の知識はあるが、最後の最後で何かミスる古城。法律の知識はそこまであるわけではないが、行動力があり、古城の推理などから本当の真相へたどり着く夏倫。このコンビの相性の良さと、この関係性って、知識だけでは……という「実務家」としての法律家の経験からくるものなのかな? と感じる。

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Tag:小説感想五十嵐律人

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