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坊っちゃんの身代金

著者:本江ユキ



非正規の日本語学校講師をしている夕香子は、留学中の中国人富豪の息子、通称・坊っちゃんが200万円を落としてしまったが警察にも届けず、諦めたという話を耳にする。しかも、リモート授業の坊っちゃんの画面には、銀行口座のパスワードらしきものまで……。生活が苦しい夕香子と同棲中の恋人・啓治は、出来心でその口座から30万円を盗んでしまう。だが、なぜかその坊っちゃんから、さらに3億円が届いて……
第20回『このミス』大賞・隠し玉作品。
正直なところ、「なんでそうなるの?」と思うところは色々とある作品ではある。
中国の富豪の息子で、世間に疎く、しかも危機意識の欠片もない坊っちゃん。200万円の件もそうだけど、数十万円、数百万円の金額をポンポンと買ってしまうような存在。口座での引き落としなども、大雑把な金額くらいしか見ておらず、数万円くらいならばごまかせるはず。そんな出来心でお金を自分の口座に移すが……。そもそも、夕香子は3万円だけ、のはずだったのに、啓治はその十倍の30万円をちょろまかす。夕香子も夕香子だけど、それを上回る啓治の身勝手さ。この時点で、うーん、という感じに。
それで終わり、と思ったら、なぜか3億円が贈られてきて、啓治が金を送った仲間の恋人が誘拐された、という情報が。その身代金として使え、という。その中で、啓治の友達などにも疑念が掛かっていって……
この流れも、結構、無茶がある気がするんだよな。坊っちゃんがいくら世間離れしている、とはいえ、そこまでお人よし、というのはよくわからない。もっと言うなら、富豪の息子と言っても日本の不動産を購入せよ、と親から渡された大金をそういうのに使っちゃって良いの? という感じがするし、そのまま持ち逃げされて終わり、って可能性だってある。そこがイマイチ納得できない。
それでも、その身代金を巡って夕香子、啓治、その友達……の間の思惑が絡み合って、誰かが裏切っているのでは? 裏切っているとしたらそれは誰か? と疑念渦巻いていくところは面白い。物語の発端である夕香子の行動がそうであるように、皆、品行方正ではないからこそ、警察には相談できないとか、そういうのも考えられてはいるし。
……何というか、「惜しい」という感じ。疑念が渦巻く部分とかはすごく良い。だからこそ、もっとしっかりと設定などを練れば、素直に楽しめる作品になったような気がするだけに。

No.6328

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Tag:小説感想『このミス』大賞本江ユキ

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