著者:加納朋子


星、宇宙などを題材とした作品を集めた(一応)連作短編集。と言っても、各編は独立した話で最後のエピソードでそれぞれの繋がりがわかる、というような構成だけど。
2編目『星は、すばる』。小4の時、掃除の時間。クラスの遊んでいた男子が持っていた木の枝が右目に刺さってしまった。それにより、失明はしなかったものの視力を大幅に失った。右目だけでなく、左目も。それは、宇宙飛行士を目指していた私にとって致命傷だった……
ある意味、日常の中で起こりうる事故。その加害者である少年は、責任を取り、自分の世話をしてくれる。でも、そんなことは夢を失った自分にとって何の慰めにもならない。相手に対し、悪態をつき続ける私。でも……。悲劇のヒロインから一転して……そういうひっくり返しの見事さ。そうすると、後味が悪い物語になりそうなのだけど、主人公の「弱さ」とか、そういうものをしっかりと描き、必要以上に後味が悪くなり過ぎないバランス。その辺りが流石だな、と感じさせるエピソードだった。
3編目『箱庭に降る星は』。文武両道で、完璧と言われる生徒会副会長から呼び出された僕。部員不足の文芸部に所属する僕と同じように、天文部、オカ研もまた部員不足で廃部を勧告されてしまう。だが、副会長は鬼の様な形相とは裏腹に泣き落としに弱い、という一面を持っていて……。廃部の危機にあった部員たちが協力をし、それぞれの抱えた問題を解決。それ自体も面白いのだけど、その一方で、副会長が抱えている問題へ……という繋がり方が「そうくるか!」という感じ。面倒くさい問題を抱えているからこそ、正論をかざしながらもやさしさに繋がり、主人公たちの行動から……。そのフィードバックが心地よかった。
6編目『星の子』。母が宇宙飛行士でずっと海外にいる七星。自分を放ってアメリカに行ってしまった母を勝手な人と考える彼女が中学でクラスメイトとなったのは有名俳優の娘・水輝だった。互いに有名人の親を持つ二人は親しくなっていくが……。お互いに、有名人を親に持つ身。一見、似ていると思っているが……
多分、水輝のように、親が有名人、成功者じゃなくても……っていうケースは多いと思う。その苦しさ。そして、その一方で、身勝手だとずっと思っていた七星の母の本心。何が「子供想い」なのか? その辺りを色々と考えさせる。
最初に書いたように、それぞれのエピソードは最終的につながっていく。各編のキャラクターの名前、さらにテーマといったものが共通しているし、何となく繋がっているんだろうな、というのはそこまででもわかるんだけど……家系図とか、図解とかを作りたくなってくる。
No.6329

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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星、宇宙などを題材とした作品を集めた(一応)連作短編集。と言っても、各編は独立した話で最後のエピソードでそれぞれの繋がりがわかる、というような構成だけど。
2編目『星は、すばる』。小4の時、掃除の時間。クラスの遊んでいた男子が持っていた木の枝が右目に刺さってしまった。それにより、失明はしなかったものの視力を大幅に失った。右目だけでなく、左目も。それは、宇宙飛行士を目指していた私にとって致命傷だった……
ある意味、日常の中で起こりうる事故。その加害者である少年は、責任を取り、自分の世話をしてくれる。でも、そんなことは夢を失った自分にとって何の慰めにもならない。相手に対し、悪態をつき続ける私。でも……。悲劇のヒロインから一転して……そういうひっくり返しの見事さ。そうすると、後味が悪い物語になりそうなのだけど、主人公の「弱さ」とか、そういうものをしっかりと描き、必要以上に後味が悪くなり過ぎないバランス。その辺りが流石だな、と感じさせるエピソードだった。
3編目『箱庭に降る星は』。文武両道で、完璧と言われる生徒会副会長から呼び出された僕。部員不足の文芸部に所属する僕と同じように、天文部、オカ研もまた部員不足で廃部を勧告されてしまう。だが、副会長は鬼の様な形相とは裏腹に泣き落としに弱い、という一面を持っていて……。廃部の危機にあった部員たちが協力をし、それぞれの抱えた問題を解決。それ自体も面白いのだけど、その一方で、副会長が抱えている問題へ……という繋がり方が「そうくるか!」という感じ。面倒くさい問題を抱えているからこそ、正論をかざしながらもやさしさに繋がり、主人公たちの行動から……。そのフィードバックが心地よかった。
6編目『星の子』。母が宇宙飛行士でずっと海外にいる七星。自分を放ってアメリカに行ってしまった母を勝手な人と考える彼女が中学でクラスメイトとなったのは有名俳優の娘・水輝だった。互いに有名人の親を持つ二人は親しくなっていくが……。お互いに、有名人を親に持つ身。一見、似ていると思っているが……
多分、水輝のように、親が有名人、成功者じゃなくても……っていうケースは多いと思う。その苦しさ。そして、その一方で、身勝手だとずっと思っていた七星の母の本心。何が「子供想い」なのか? その辺りを色々と考えさせる。
最初に書いたように、それぞれのエピソードは最終的につながっていく。各編のキャラクターの名前、さらにテーマといったものが共通しているし、何となく繋がっているんだろうな、というのはそこまででもわかるんだけど……家系図とか、図解とかを作りたくなってくる。
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