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箱庭の巡礼者たち

著者:恒川光太郎



6編の短編と、そこに関する断片5編を収録した短編集。
と言っても、最近、こういう作品ばかり読んでいるなぁ……という感じで、本作もそれぞれに繋がりがある、という構成ではあるが。
1編目『箱のなかの王国』。僕が住む町を水害が襲った。そんな事件の中、母が行方不明となり、そんな中で僕は奇妙な箱を見つけた。その箱は、一見、ただの箱なのだが、僕にはその箱の中に奇妙な世界が広がっているのが見えて……
ある意味で、表題作に近そうな内容の作品。箱の中には王国があり、そこに社会が出来ていた。箱の中の世界は、実世界の3分の1で1年が巡る。そんな世界に、クラスメイトの絵影が飛び込んでいって……。何かをするわけではない。ただ、その世界の出来事を観察するだけ。そんな世界の法則を確認する。そして、その世界に飛び込み、革命を起こそうとする絵影を観察する。その密やかな楽しみと、しかし、仲の良かった少女を失ってしまったという悲しみ。そんなものの後味が印象的。
『洞察者』。幼いころから、様々なことを察する、という能力を持った少年(青年)の物語。このエピソードは、結構、素直な超能力者の物語、という印象。無意識のうちに蓄えた情報などから、隠していることを見破ってしまうことが出来る。それが原因で、仲の良かった知人を喪ったり……。そんな中で、彼がかつて起こった事件では……。超能力者だからこその悲哀。その寂しさと、同じような仲間を得た喜び。そんなものが印象に残った。
逆に『ナチュラロイド』は、SF色の強い物語。6歳に行われた試験により、「王」となった僕。実務は、ペルペル人と言われる人々が行うのだが、そもそも、ペルペル人って何だろう? 人類の歴史はどうなっているのだろう? と考えるようになっていって……
ちょうど、この文章を書いているときにイラストを作るAIが、というような話が話題になっているのだけど、AIとかそういうものが社会をどう仕切るのか? そして、そんな合理性を追求した先にあるもの。
結構、素材だけを拾ってみると素直な話はあるのだけど、それぞれに繋がりがあり、それが壮大な世界観へと繋がっていく。そして、そんな中で1編目とか、それぞれの主人公のすぐそばに意外な世界が……というような印象。著者らしさによって、上手く味付けがされているな、という風に感じた。

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Tag:小説感想恒川光太郎

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