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怪談小説という名の小説怪談

著者:澤村伊智



7編を収録した短編集。ここのところ、自分が読んだ短編集はどこかで繋がりがある連作短編形式のものが多いのだけど、本作は、完全にそれぞれが独立した短編集。
1編目『高速怪談』。深夜の高速道路。皆で車を借り、関西へと向かう出版関係者たち。それは、皆で里帰りをするため。そんな車内では、「怖い話」で皆が盛り上がって……。ある意味では、百物語のように、皆が怖い話を披露していって……という話。ただ、本当にちょっとした話だったり、それについて合理的な解釈が出てきたりして……と、大学のサークルなどで盛り上がっているような印象。そんな中で、緩い繋がりだった関係性の中に……? 盛り上がりが一瞬にして恐怖に変わる展開と、そこからのさらなるオチ。40頁弱の作品なのに、全く予想のつかない流れに翻弄される。
5編目『うらみせんせい』。突如、教室の中に閉じ込められてしまった少年少女。それは物理ではなく、何か超常現象によるもののよう。そんな中で、誰かと出会えれば、移動できる範囲が広がるようだ。誰かと出会うことが出来れば……法則が分かってくるのだが、しかし、閉じ込められた面々が一人、また一人と殺されてしまう。そんな中でささやかれるのは、昔、この学校に赴任し、しかし、学校に恨みをもって自殺した、とされる「うらみせんせい」なる存在がクローズアップされてきて……。何か、特殊設定のデスゲームとか、そういうものだと思わせておいて……のひっくり返し。短編らしい切れ味が見事。
6編目『涸れ井戸の声』。個人的に、これが一番、印象に残った話。
小説家の元に届いた「涸れ井戸の声」が面白かった、というメッセージ。しかし、そんな小説を書いた覚えはない。しかも、その掲載誌というのにも掲載されていない。そう返事をすると「違うものだったかも知れない。何に掲載されていたかわからない」と……。だが……
これ、印象的なのは現代が舞台の方が怖いのか、それとも昔の方が怖いのか、というのを考えてしまったため。
自分が書いた覚えのない小説。現在であれば、データなどで確認をするのが簡単。しかし、それで「そんなものを書いたことがない」とハッキリとしたら……。一方で、昔のように原稿用紙で、という時代であったら、「記憶にない。でも、もしかしたら……」なんてことがあるかも知れない。いや、どちらにせよ、嫌な感じにはなるのだろうけど……。そういうことを頭に浮かべて、すごく印象に残った。

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Tag:小説感想澤村伊智

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