著者:支倉凍砂


いがみ合う王子たちの問題を解決したコルとミューリ。80年ぶりに開催される公会議への出席要請が来る中、コルは聖典印刷の計画を進めるべく、資材確保と新大陸の情報を求め、大学都市へと向かう。そこは、かつて、コルが辛酸をなめた地。そして、今なお、教科書選定の利権などを巡っての争いが起きていた。その街で、コルは「賢者の狼」を名乗るルティアと出会う……
聖典を印刷し、教会の不正を糺す。今回の物語の発端はそこにあるのだけど、ちょっとだけ、今回の話は横道での話という印象かな。
資材確保などの目的を持ち、大学都市を訪れたコル。冒頭の粗筋でも書いたように、そこはロレンスらと出会う前のコルが辛酸をなめた地。大学都市、学生街、というと研究者や学生たちが研究などをしていて……というイメージ。しかし、現在のような学制などがあるわけでもなく、純粋に理想を求めるものもいれば、金などに群がる有象無象も。授業を収める、というために不正なども横行し、また、写本しかない時代、どれが教科書になるのか、というようなことを巡ってギャンブルまがいのこともまかり取っている。そして、コル自身がその街に吞み込まれてしまった、という苦い過去を持つ。
そんな町で出会ったルティア。不正を糺し、呑み込まれてしまった若者たちを救おう、という活動をしている女性。そして、彼女もまた、ホロやミューリなどと同様、知恵を持った狼。コルは、ルティアの思いに賛同し、協力を申し出るが……
不正を糺す活動をしているグループのリーダー。そうはいっても、彼女自身も一人の学生という身。他の勢力との争いなどに忙殺されるのみ。そんな中、コルの協力を得ることで、それまでの彼女の身ではできなかった手段もでき、問題は解決する……はず。しかし、何か様子がおかしい。そして、共に行動をするミューリもまた。それの正体は……
大学都市の不正などを巡ってのイザコザ。そこに主眼を置きつつ、実は別のところに突破口が。組織を主導するルティアと、それに協力するミューリ。双方に共通するものは? 本編と言えるロレンスとホロの旅でも、途中から表に出てきたテーマとも共通するし、また、大学都市という舞台もそんな印象を強くさせる設定になっているのかな? と感じる。多分、多くの学生がそう感じることがある感傷を上手く言語化したように思う。
最初に書いたように、大学都市内での不正とかが題材なので、印刷がどうとか、そういう部分はあまり描かれていないのだけど、こういう中世くらいの様々な様相を描くことで、世界観を広げ、宗教改革という大きな目的への足掛かり、道のりの長さを感じさせる話なのかも知れない。
No.6335

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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いがみ合う王子たちの問題を解決したコルとミューリ。80年ぶりに開催される公会議への出席要請が来る中、コルは聖典印刷の計画を進めるべく、資材確保と新大陸の情報を求め、大学都市へと向かう。そこは、かつて、コルが辛酸をなめた地。そして、今なお、教科書選定の利権などを巡っての争いが起きていた。その街で、コルは「賢者の狼」を名乗るルティアと出会う……
聖典を印刷し、教会の不正を糺す。今回の物語の発端はそこにあるのだけど、ちょっとだけ、今回の話は横道での話という印象かな。
資材確保などの目的を持ち、大学都市を訪れたコル。冒頭の粗筋でも書いたように、そこはロレンスらと出会う前のコルが辛酸をなめた地。大学都市、学生街、というと研究者や学生たちが研究などをしていて……というイメージ。しかし、現在のような学制などがあるわけでもなく、純粋に理想を求めるものもいれば、金などに群がる有象無象も。授業を収める、というために不正なども横行し、また、写本しかない時代、どれが教科書になるのか、というようなことを巡ってギャンブルまがいのこともまかり取っている。そして、コル自身がその街に吞み込まれてしまった、という苦い過去を持つ。
そんな町で出会ったルティア。不正を糺し、呑み込まれてしまった若者たちを救おう、という活動をしている女性。そして、彼女もまた、ホロやミューリなどと同様、知恵を持った狼。コルは、ルティアの思いに賛同し、協力を申し出るが……
不正を糺す活動をしているグループのリーダー。そうはいっても、彼女自身も一人の学生という身。他の勢力との争いなどに忙殺されるのみ。そんな中、コルの協力を得ることで、それまでの彼女の身ではできなかった手段もでき、問題は解決する……はず。しかし、何か様子がおかしい。そして、共に行動をするミューリもまた。それの正体は……
大学都市の不正などを巡ってのイザコザ。そこに主眼を置きつつ、実は別のところに突破口が。組織を主導するルティアと、それに協力するミューリ。双方に共通するものは? 本編と言えるロレンスとホロの旅でも、途中から表に出てきたテーマとも共通するし、また、大学都市という舞台もそんな印象を強くさせる設定になっているのかな? と感じる。多分、多くの学生がそう感じることがある感傷を上手く言語化したように思う。
最初に書いたように、大学都市内での不正とかが題材なので、印刷がどうとか、そういう部分はあまり描かれていないのだけど、こういう中世くらいの様々な様相を描くことで、世界観を広げ、宗教改革という大きな目的への足掛かり、道のりの長さを感じさせる話なのかも知れない。
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