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遺産相続を放棄します

著者:木元哉多



室町時代より続く名家・榊原家。経営していた会社は潰れ、新たな事業も失敗続きという斜陽の家ではあるが、それでもまだ多くの資産を持っている。そんな榊原家の当主・道山が死亡。その遺産は、孫であり長男の俊彦に受け継がれる……はずだった。だが、俊彦は、その遺産相続の放棄を宣言する。俊彦の妻・景子は翻意を促すが、俊彦の意志は固い。しかも、その裏には義姉の策謀が……。それを知った景子は、思わず義姉を死亡させてしまう。だが、放置した義姉の遺体はなぜか消えてしまい……
なんか、いろんな意味ですごい!
著者のデビュー作である「閻魔堂沙羅」シリーズは、本格モノの謎解きと、沙羅の可愛さ、みたいなものがあったのだけど本作は……
ハッキリ言って、登場人物に誰一人として好感が持てねぇ! 勿論、それは著者の意図するものなんだけど。
まず、主人公である景子の夫・俊彦。資産家である榊原家の御曹司として育てられ、ある意味では、極めて純粋。ただ、社会常識というものが欠如しており、しかも、金銭感覚もおかしく、ちょっとした移動でもタクシーを利用。仕事は長続きせず、趣味のけん玉の動画を投稿するのを「仕事」と称している(収入はない) 家事などは他人がやって当たり前、という感覚。その上で、家に縛り付けられている、と感じている。
……夫がそんななので、主人公の景子の苛立ちはわかる。わかるのだけど、景子もまた、榊原家の財産を狙っている部分があり、決して真面目な人か、というと……。そして、そんな中で、夫に放棄を進めていた義姉の策略を知り、思わず死なせてしまう。
……が、放置したはずなのになぜか発見されない義姉の遺体。自らの意思による失踪扱いになり再び夫に相続のチャンスが。そんなときに、景子の元へ届くのは「お前が殺したことを知っている。だから、交換殺人を」という脅迫状が……
上手くすれば遺産相続ができる。そして、脅迫者は誰だ? という疑念を抱きながらも、その脅迫の通りに事件を起こし……。
作中でも何度も書かれているように、無能で覇気を感じられない榊原家の一族の内部争い。そんな中で事件を起こしながらも何とか立ち回る景子。読んでいてイライラしながらも、でも、スリリングな展開というのはなかなかの元。そして、遂に景子の元へも警察の手が及んで、事件の構図が明らかになり……
黒幕と思われた人物が……というひっくり返しとかは見事だし、その背景。このイライラさせるような人物たちばかりだからこその黒幕の行動には納得。ただ、そのトリックに関してちょっと後出し感もあるなぁ、という印象。ちょっと都合よくいきすぎな感じもするし。そこはちょっと引っかかりもした。
読んでいて、心地よい話ではないのだけど、でも、スリリングな展開を楽しめたのも確か。

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Tag:小説感想木元哉多

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