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SICK 私のための怪物

著者:澱介エイド



人の精神に寄生し、恐怖症を引き起こす概念生命体フォビア。精神世界に入り、そのフォビアを狩る叶音と逸流の姉弟の元にやってきたのは、誰かに見られていると感じているモデル・星那。早速、星那の心に入る叶音だったが、そこに恐怖の語り部を名乗る男・ツヅリが現れ……
第16回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。
く、く、く……暗い……。どうしても、まずそんな感想が出てくる。
物語の冒頭、プロローグの段階で主人公である叶音がとんでもない闇を抱えている、ということは示唆されているのだけど、本編が始まると、精神の中に巣食うフォビアを、その精神世界に入り込んで退治する、という、言っちゃ悪いけれども「普通の異能バトル」もの、という印象。そんな精神世界で、「恐怖の語り部」を名乗るツヅリという黒幕と言える存在が現れた。それでも、一旦は星那の様子は良くなるのだが……再び……
そんな物語の中で断章として挿入される叶音と逸流の過去。逸流の存在が実は……という示唆。
主人公・叶音自身に暗い過去などが見え隠れしつつ、依頼人である星那の方の周囲にも暗い影が。それは、星那に恩義を感じている、という友人・文乃の存在がクローズアップ。どちらのストーリーも何となくの方向は見えるのだけど、それが組み合わさり、さらに過去のエピソードの中での世界観などが掘り下げられていくと……
叶音が抱えている闇。文乃の抱えている闇。それぞれの事情については理解が及ぶのだけど、それらが組み合わさることによってどちらもが闇にまみれた真っ暗な物語へと変貌していくのが印象的。
これ、ある意味では、人間にありがちな行動を描いているんじゃなかろうか? 自分が問題を抱えている。だからこそ、そこから目を背け、他のことに熱を入れてしまう。よく、試験勉強中に部屋掃除を、みたいなことがあるけど、それをもっと極端にした、とでもいうか……。
結末部分でも、その問題が完全に解決したわけではない。むしろ、叶音は……とすら思う。でも、その暗さ、こそが人間の一つの本質じゃないか、とも思う。

No.6340

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Tag:小説感想ガガガ文庫澱介エイド

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