著者:新川帆立


亡くなった町弁の仕事を引き継ぐことになった剣持麗子。これまでの仕事に加えて、という多忙を極まりない生活を送ることに。そんなある夜、麗子の元に罹ってきたのは、不動産屋の主人の殺害事件で被疑者となった第一発見者「武田信玄」なる人物からの呼び出しだった(『家守の理由』)
からの連作短編集。
『元カレの遺言状』、『倒産続きの彼女』に続くシリーズ第3作。一応、連作短編集、ということになるのかな?
タイトルの通り、夜中にもかかわらず仕事をする麗子の元に、なぜか依頼が舞い込み、一晩で事件を解決して、という物語。
粗筋で書いた1編目。夜中に呼び出された麗子。武田信玄という明らかな偽名の依頼人。その武田信玄という青年は、第一発見者だが、それは、不動産屋に侵入してのものだった。しかも、その家は、不動産屋から家賃滞納で訴えられており、武田信玄はその書類を処分しようとしてのものだった。普通に、その際に見つかって……と思われたが。
明らかに怪しい青年。しかし、依頼を受けたからには……。そして、もし、殺していないならなぜ、彼はその家に居続けようとしたのか? 犯人が誰か? という点についてはやや不完全燃焼な部分もあったのだけど、依頼人を守る、という意味ではこれで良いのだろう。
個人的に好きなのは3編目『何を思うか胸のうち』。年に一度の、事務所所属弁護士による運動会。そこには、最近、事務所に入った先輩弁護士も。仕事はできるが、細かなところにうるさく、人望もない。しかも、前の事務所でトラブルを起こし、何とか拾ってもらった、という立場。だが、そんな先輩弁護士が、夕刻、変死体で発見されて……
トリックがどうのこうの、というよりも、この先輩弁護士自身が。現在の職場でも、決して人望があるわけではない。しかし、現場に残された物品から見えてきたのは、何とか拾ってもらった事務所のために……という彼の努力。もしかしたら……そういう将来があったかも、と考えると切ない……
で、この辺りのエピソードまでは、独立した短編という感じなのだけど、流れで助手ということになった武田信玄こと、黒丑という青年に何か怪しい部分が見えてきて……での最後のエピソード。一応、黒丑の真相とかは解決するんだけど、何かモヤモヤとする終わり方だなぁ……という感じに。
ただ、1作目と比べれば、口調とはともかく、はるかに麗子が丸くなったなぁ、という感じはする。
No.6356

にほんブログ村
この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。
亡くなった町弁の仕事を引き継ぐことになった剣持麗子。これまでの仕事に加えて、という多忙を極まりない生活を送ることに。そんなある夜、麗子の元に罹ってきたのは、不動産屋の主人の殺害事件で被疑者となった第一発見者「武田信玄」なる人物からの呼び出しだった(『家守の理由』)
からの連作短編集。
『元カレの遺言状』、『倒産続きの彼女』に続くシリーズ第3作。一応、連作短編集、ということになるのかな?
タイトルの通り、夜中にもかかわらず仕事をする麗子の元に、なぜか依頼が舞い込み、一晩で事件を解決して、という物語。
粗筋で書いた1編目。夜中に呼び出された麗子。武田信玄という明らかな偽名の依頼人。その武田信玄という青年は、第一発見者だが、それは、不動産屋に侵入してのものだった。しかも、その家は、不動産屋から家賃滞納で訴えられており、武田信玄はその書類を処分しようとしてのものだった。普通に、その際に見つかって……と思われたが。
明らかに怪しい青年。しかし、依頼を受けたからには……。そして、もし、殺していないならなぜ、彼はその家に居続けようとしたのか? 犯人が誰か? という点についてはやや不完全燃焼な部分もあったのだけど、依頼人を守る、という意味ではこれで良いのだろう。
個人的に好きなのは3編目『何を思うか胸のうち』。年に一度の、事務所所属弁護士による運動会。そこには、最近、事務所に入った先輩弁護士も。仕事はできるが、細かなところにうるさく、人望もない。しかも、前の事務所でトラブルを起こし、何とか拾ってもらった、という立場。だが、そんな先輩弁護士が、夕刻、変死体で発見されて……
トリックがどうのこうの、というよりも、この先輩弁護士自身が。現在の職場でも、決して人望があるわけではない。しかし、現場に残された物品から見えてきたのは、何とか拾ってもらった事務所のために……という彼の努力。もしかしたら……そういう将来があったかも、と考えると切ない……
で、この辺りのエピソードまでは、独立した短編という感じなのだけど、流れで助手ということになった武田信玄こと、黒丑という青年に何か怪しい部分が見えてきて……での最後のエピソード。一応、黒丑の真相とかは解決するんだけど、何かモヤモヤとする終わり方だなぁ……という感じに。
ただ、1作目と比べれば、口調とはともかく、はるかに麗子が丸くなったなぁ、という感じはする。
No.6356

にほんブログ村
この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。
スポンサーサイト