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京都陰陽寮謎解き滅妖帖

著者:伊吹亜門



古より超常の力を継承する国家公務員・陰陽師。そんな陰陽師の育成機関である明學院に通う狩埜師実は、チームを組む九条紅雀、白峯明日可と共に、事件へと駆り出される。そして、その事件先では不可解な謎が横たわっていて……
という連作短編集。全3編を収録。
著者の作品は、ミステリフロンティアで刊行された2作を読んだのみ、なのだけど、陰陽師という歴史モノではお馴染みの題材を使っている部分はともかく、本当に退魔モノという形で展開していく。そこには、しっかりと謎解きがあるのだけど、かなりキャラクター部分を重視している、とでもいうか。
1編目『長刀坂忌憚』。3人に与えられた任務は、ネット上で怪談スポットとして紹介されている場所で起きた怪事件。肝試しにやってきた大学生3人が死亡し、その内臓が抜き取られていた、というもの。その異常な遺体から、怪異の存在が疑われるが、その現場に行ったとき、肝試しに同行したという一人の学生と出会う。そして、彼女の語る当時の状況は、出動の際の説明とは異なっており……
作品内に怪異、という存在があるのだけど、このエピソードはまさしくホワイダニットの物語。相反する二つの事件状況の相違。なぜ、そんなことが起きているのか? そして、その背景にあるものは? 個人の想いとネットにより様々な噂が拡散する、という現実の世界でも起きる出来事。それを、上手く怪異、陰陽師という題材を使ってまとめ上げたな、という印象。
純粋にハウダニットのミステリとして面白かったな、と思ったのが3編目『祇園結界防衛司令』。数々の事件を解決してきた陰陽師・無車家の当主が引退を表明し、その孫娘が後継者に。継承の儀式の護衛の任を授かった師実たちだったが、外部のものが入れない継承の儀式のなか、後継者の孫娘の酒に青酸カリが……
外部の人間が入れない状況。継承の儀式では、祖父が酒を飲み、同じ杯で今度は孫が……。祖父は何も起きず、孫だけが。偶然の産物、という部分もあるにはあったが、しかし、青酸カリの混入ルートはわからないまま……。その真相は?
衆人環視の状況。その中での不可解な毒の混入。そのポイントとなる儀式の行われるシチュエーション。この状況でなければ不可能、というトリックが何よりも印象的だった。
で、物語としては、師実たちと対立する存在とかも出てきて、それとの決着とかには至らず。ミステリーとしての謎解きをメインにしつつ、しかし、陰陽寮と敵対する組織の対立とか、そういったイザコザの影も。そういう部分は、キャラクター小説の印象も強い。本作は、星海社FICTIONSの「新本格カーニバル」という企画の1冊として刊行されているのだけど、続編もしっかりと出してください、という風に思わずにはいられない。

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Tag:小説感想伊吹亜門

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