fc2ブログ

俺ではない炎上

著者:浅倉秋成



「血の海地獄。さすがに魚とかとは違う」 拙い写真と共にTwitterに投稿された一つのつぶやき。一つのリツイートがきっかけとなり、瞬く間に拡散。あっという間にその投稿主と思われる人物も判明する。こうして、大手住宅メーカーの部長・山縣泰介は、殺人犯とされてしまう。事実無根なのになぜ? 周囲が殺人犯と疑う中、泰介は必死の逃亡をしながら犯人を追うが……
こう来るか!
ネット上での問題発言。現実での何かしらの事件。そういうものが起こると、必ず、それが誰なのか、という捜索が始まる。そして、実際には犯人じゃないのに「こいつが犯人だ」とされて、その仕事先とかに嫌がらせなどが殺到する……なんていうのは実際にも起きていること。泰介の場合も、最初はそう思っていた。職場からは、犯人扱いされしばらく休めと言われる。それでも、しばらくすれば収まるだろう。そう思っていたが……
焦点となるアカウントに書かれている情報。それは、自分の座右の銘であったり、自分の趣味などと一致。知らない人が見れば……どころか、知っている人こそ、これは自分のアカウントと思うはず。しかも、そんな中、自分の家の物置に、他殺体が置かれていて……
ただのネット上での疑惑が、状況証拠、さらに物証と増え、どう見ても自分が殺人犯に。そんな中、泰介は逃亡劇を開始する。そして、警察だけでなく、世間からも追われる存在になっていく……。まず、この段階でスリリング。
その上で考えさせられるのは、タイトルの意味。そもそも、泰介は自分ではない、というところからスタートするのだけど、疑惑が向けられる中、自分の行動、評価というのを目の当たりにさせられる。自分の趣味であるゴルフに、部下を誘ったりもした。部下は喜んで共にしてくれていた……と思っていた。しかし、事件に巻き込まれる中、周囲からいわれるのは上司だから断れなかった、という言葉。ミスをした部下を叱責するのも上司の仕事。でも……。そんな自己評価と周囲の評価の対比。そして、そういうのは、最初にリツイートした大学生などにもあって……
物語の終盤、大きなトリックなどもあるのだけど、その部分以上に自己評価と他者の評価の違い。それに気づかずに行動をすることの危うさ。そういうものを何よりも強く感じた。

No.6358

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想浅倉秋成

COMMENT 0