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拝啓 交換殺人の候

著者:天祢涼



上司からのパワハラで心を病み、退職した秀文。再就職もままならず、絶望に呑み込まれた彼は自らの命を絶つため、廃神社を訪れた。……が、そのために上った木の洞に一通の手紙が入っているのを発見する。そこには「どうせ死ぬなら殺してみませんか?」としたためられていて……
交換殺人を題材にした作品……ではあるのだけど、かなり独特なストーリー展開を見せてくるな、という印象。
冒頭に書いたような形で始まる物語。細かな約束事が書かれたその手紙に興味をひかれた秀文は、その相手が一人の少女である、ということを知る。一方、その手紙を最初に書いた少女・詩音もまた、その様子を監視用カメラの映像で知っていた。互いが互いの存在を(一方的に)知っている、という状況の中で、秀文と詩音のやり取りが始まる。
物語は、前半と後半で、ちょっとカラーが異なるかな? という感じ。
最初に書いたように、上司のパワハラによって仕事を失い、そして、傷を負ったままの秀文。そんな秀文の暮らすアパートの隣室に、その上司が越してきた。しかし、秀文の存在には気づかない元上司。だからこそ、彼の標的は……。しかし、そうは思っていても、その少女に事件を起こさせるわけには……そんな葛藤。そして、自分の想いなどを綴る手紙を出すことに。一方の詩音。そんな秀文のあまりにも素直な告白に苦笑いをしながらも、秀文の日常を調べ準備を進めていく。
そんな感じで、交換殺人の一方である秀文は、元上司を殺したい、というのが明らか。しかし、詩音は……という形で物語が進む。では、詩音が殺したいと思っている相手は? そこがわからないままに続く手紙でのやり取り。準備は進めながらも、本当にやるのか? という雰囲気も出てくる計画。そのなかで秀文は、詩音が誰を殺そうとしているのか、というのを察知して……
なんというか、ある意味、生真面目で、優しい性格の秀文と詩音。そんな二人が、それぞれの抱えているもの、こうしたい、という思いが出た結果。それだけを取ると、なんか「良い話」で終わりそう。でも、問題は何も解決していない。というか、そんな生真面目さ、優しさをもってしても、現実は厳しい、ということを示す結末が何とも……。一筋縄な良い話で終わらせない、という部分こそ、この作品の味なのだろう、と感じる。

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Tag:小説感想天祢涼

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