fc2ブログ

九龍城の殺人

著者:月原渉



母は目の前で殺された。そして、自分のルーツは香港にあった。新垣風は、母の遺言に従い、裏組織の長である祖母に母の遺骨を届けるため香港へと飛ぶ。迎えに現われた風の親族・シャクティ。シャクティに紹介されたホンファ。同世代の女性と出会い、祖母の暮らす香港に滞在することになるのだが……
新潮文庫nexで、このタイトル。使用人探偵シズカシリーズの新作! と思ったら違っていた。
……と思い、書籍感想の投稿サイトを見たら、同様の勘違いをしている人が結構いて、ちょっと安心した。
で、物語としては九龍城で裏組織を束ねている祖母の元へやってきた風。同世代のシャクティ、ホンファと出会い意気投合するものの、ホンファは、祖母が営む売春窟に入ることに。だが、女性だけで組織されたその売春窟で、そこを束ねるボスのロン、さらに警備担当が殺害されて……
作中で描かれる殺人事件は2つ。そして、そのトリックは結構、シンプルだな、という感じを受けた。
ただ、それよりも、この組織の中の出来事。そこから派生するものが印象的。
ホンファがやってきたとき、ボスであるロンが行った行動。それは、売春窟に籍を置く女たちとの面接。その際に、ロンは全員にある質問をしていた。その質問の意図は何だったのか? そして、それがなぜ、殺人に発展してしまったのか? 香港の、それもある意味で最底辺と言える状況の女性たち。そして、その女性たちにとって、何が救いになるのか、と言えば……。これだって、普通に考えれば「救いなのか?」という感じではある。でも、そこに救いを見出すしかない絶望感。そして、そういうものは、組織そのものにもあって……。
終盤の展開とか、ちょっと駆け足だな、というのは感じたのだけど、九龍城という、ある意味、混沌の世界という舞台にした雰囲気は十分に楽しむことが出来た。

No.6378

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想新潮文庫nex月原渉

COMMENT 0