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小説が書けないアイツに書かせる方法

著者:アサウラ



自らの性の悩み―勃起できないこと―と、そんな彼の家族の話を書いた小説で新人賞を受賞した月野シズクこと、月岡零。男子高校生であること、そして内容が内容なだけに、その正体を隠して活動をしていたのだが、2作目を書くことが出来ずにいた。そんな彼の前に現われた美女・一ノ瀬琥珀に、「私の考えた小説を書かねば、あなたが月野シズクであることをバラす」と脅され、その内容を聞くのだが……
「えっちで面白くて切実な創作物語」と帯にあるのだけど、確かにエロ系シーンは多い。多いのだけど、エロに振った話、というよりも常に暗い雰囲気をまとい続けている話だな、というのをまず思う。
粗筋に「新人賞を受賞」と書いたのだけど、その新人賞というのは、官能小説のレーベルのもの。そして、琥珀に脅迫されて書くことになるものもまた……。そのため、執筆するための取材、と称して色々とされたりとか、そういうシーンは数多くある。あるのだけど、零自身が勃起不全だ、とか、そういうものもあって快楽に、とか、そういう方向へは行かない。しかも、琥珀が語る物語も、三角関係の中で揺れ動く……という風に言っているのに、話を聞いているうちに、その片方が職種の化物、とか「どんなやねん!」という設定だったり。
ハッキリ言って滅茶苦茶以外の何物でもない設定の話。しかも、琥珀の説明も下手糞で何度となく書き直しを余儀なくされる。完全に振り回されてばかり。けれども、なぜかその物語は魅力的で、零の股間も反応して……
……というところから、琥珀は一体、何者なのか? その目的は何か? というところへと話が移っていって……
暗い背景を背負った零。そして、やはり「何か」を抱えている琥珀。当初は、琥珀が零に……だったのが、琥珀の正体が知れていく中で……。タイトルの「アイツ」がどちらなのか? そういう部分でのひっくり返しとかは素直にうまいな、と感じた。
ただ、その上で一つ。
終盤の、零による琥珀の説得のセリフ……
琥珀じゃないけど、「出版社の会議室だよ!」
……シリアスな創作の話のようだけど、よくよく考えると、やっぱり色々とおかしいわ!

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Tag:小説感想電撃文庫アサウラ

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