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(書評)荒野

著者:桜庭一樹

荒野荒野
(2008/05/28)
桜庭 一樹

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山之内荒野、12歳。いつも、周囲に女の人の姿が絶えない「恋愛小説家」の父と、年齢不詳の家政婦さんと暮らしている。中学の入学式の朝、電車の中でその少年と出会った…。12歳~16歳、荒野の多感な時期を描く。
ファミ通文庫で発表された『荒野の恋』第1部、第2部に、書き下ろしの第3部を加えた作品。
ジャンルとしては、青春小説、成長物語…なんていう言葉があてはまるのだろうけれども、よく言われる「甘酸っぱい」とか、「ほろ苦い」とか、そういう表現があまりピンと来ない印象がある。あえて言うと「瑞々しい」になるかも知れない。
語り口だとかは、『赤朽葉家の伝説』などと同様、非常に淡々と日常を描くスタイル。
身体的なところであったり、はたまた、これまで気づかなかった父とその周囲の女性たちの間に垣間見えるものであったり、はたまた、同世代の友達の中であったり…それぞれちょっとしたこと。けれども、着実に子供から大人へ、少女から女へと変わっていく。それは、周囲からすれば一歩引いた感のある荒野にも。
本当に、少女・荒野の日々が描かれているだけ、なのだけれども、荒野と父の周囲の人々(女性)を巡る部分、同世代の友達との比較、悠也との関係…そういうところで一歩ずつ成長が見えてくる、というのが何よりも新鮮。それぞれは些細なこと、些細なことなのだけれども、それが却って、瑞々しさ、そして、着実さを感じさせるのではないか、というような気がする。ああ、上手く表現できない(苦笑)
桜庭さんの作品の「少女」と言うテーマは、様々な切り口がなされていたわけだけど、本作は、その中でも相当に「地味」で、でも、「共感」しやすいものになっているのではないかと思う。勿論、人それぞれに経験の違いはあるのだろうけど、誰しもが経験すること(男女の違いとかはあるにせよ)、誰もが身近にあるものだから。
瑞々しい時代を着実に描いた佳作、と言う風に感じる。

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COMMENT 8

しんちゃん  2008, 06. 30 [Mon] 12:24

こんにちは。
おサルだった男子が、さり気なく黒板の上部を消す場面が印象的でした。
さらっと描写していましたが、こういうのにキュンときます。
おとこですけど(笑)

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藍色  2008, 07. 01 [Tue] 02:54

こんばんは。
これまで読んだ桜庭さんの「少女」テーマ、
戦うことが基本の印象でした。
(特にご存知のように、ラノベ系で)。
なので地味で些細な物語にビックリ。
でも共感できて新鮮で楽しかったです。

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たこやき  2008, 07. 01 [Tue] 19:25

しんちゃんさんへ

細かい描写ですけれども、そういうところ一つから、成長とかを読み取れる、というのが良いですよね。
作品そのものは、荒野の成長、なのですが、周囲も、皆、気づかないうちの成長している、というのが感じられました。

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たこやき  2008, 07. 01 [Tue] 19:30

藍色さんへ

こんばんは。
ライトノベルレーベルでの作品ですと、どうしても、そういう設定が多くなりますよね。
ただ、桜庭さんの場合、その中でも『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』(富士見ミステリー文庫)など、「ライトノベルらしくない」作風のものは多かったように思います。その中でもこの作品はダントツに、地味ですが(笑)
地味な中でも、桜庭さんらしさ、桜庭さんならではの表現が多く、良いな、と感じました。

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エビノート  2008, 07. 12 [Sat] 23:10

一歩一歩着実に成長してゆく荒野の姿が良かったですね~。恋愛に関する面もですけど、時が経つにつれ義母の容子さんと家族になってゆく様子も良かったです。

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たこやき  2008, 07. 13 [Sun] 22:06

エビノートさんへ

こんばんは。
恋愛、という部分が中心ではあるのですが、それ以外のところでも、着実な成長を感じる描写が続いていますよね。義母との関係なども含めて。
様々な意味での「少女の成長」を感じました。

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雪芽  2008, 07. 21 [Mon] 22:30

こんばんは!
戸惑いや思案を重ね着実に成長していく姿を、細やかなエピソードで丁寧に描いていて、共感できる作品でした。

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たこやき  2008, 07. 21 [Mon] 22:49

雪芽さんへ

こんばんは。
ヒロインである荒野を始めとして、登場人物それぞれのゆったりだけど、着実な成長というのが感じられる作品ですよね。
ちょっとしたことなのですが、何となく、自分自身にも置き換えて感じられました。

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