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恋するおしい刑事

著者:藤崎翔



北関東の中核都市・宇戸橋市を管轄する宇戸橋署。その刑事課に、冴えた推理を披露するものの、あと一歩のところで必ず間違えて他人に手柄を奪われてしまう刑事、押井は在籍している。そんな刑事課に、新米の女性刑事が配属され、押井はその教育係に指名される。”灰”田”絵奈”という名前に不吉な予感を覚えつつも、しかし、彼女の美貌に惹かれる押井で……
シリーズ第2作となる連作短編集。全5編を収録。
基本的には、前作と同じで、事件の捜査に加わる押井。様々な情報から、その真相を、と推理をするのだが、詰めが甘く、最後の最後で間違える、という部分は一緒。ただ、前作は間違えたところでの周囲の反応があまりに悪くてちょっと嫌な気分になるところもあったのだけど、今回はその辺りがマイルドになっていて読みやすくなったように感じる。
個人的にまず好きなのは2編目『おしい刑事と国際交流』。韓国料理店の調理担当者が殺された。その店は、元々、その調理担当の兄がラーメン店をやっていたが、経営がうまくいかず、韓国で料理人をしていた弟が帰国し、韓国料理店に模様替えをして成功した。経営者の兄は弟を殺す動機はない。そして、従業員たちに容疑がかかる。留学生が中心の従業員たち。そして、被害者は従業員たちと関係を持っていたことが判明し……
推理のカギは、風俗店に関するメール。思いっきり下ネタに振っているんだけど、同じ単語が意味するものの違いとか、そういうのは素直に面白いと感じた。そして、その間違い……。ここにも……。この辺りの凝り方が上手いな、と感じる。
3編目『おしい刑事と殺人舞台』。お笑いライブを見に行った押井たち。だが、そこでスタッフが死亡する。事故か、と思われたが、押井は、その状況から殺人と判断する。そして……。著者は、元々、お笑い芸人だった、ということもあるのだろうけど、専門用語とか、はたまた、登場する芸人の芸風に関する蘊蓄とかが流石。そして、推理の材料となる部分についても、恐らくは著者の経験とかも踏まえてじゃないか、と思わせる。
で、今作で一番、読後感が良く感じたのは5編目『おしい刑事と雪山連続殺人』の顛末だと思う。
詳しくは書かないけど、本作の場合、押井の推理は完璧。そして、その上で……となるのだけど、別に酷い、というほどでもないんだよな。本人は色々とあるだろうけど。前作が悪ノリで不快に感じる部分があっただけに、今回は素直に楽しめた。

No.6390

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Tag:小説感想藤崎翔

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