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アオハルデビル

著者:池田明季哉



スマホを学校に忘れ、夜の校舎に忍び込んだ在原有葉は屋上を照らす奇妙な光に気づく。そこで出会ったのは、闇の中で燃え上がる美少女・伊藤衣緒花。モデルである彼女は、悪魔に取りつかれている。それを祓うためには、彼女の抱えている願いを完璧に知る必要があり、有葉は衣緒花と行動を共にすることになるのだが……
悪魔を祓う。そういう設定だとバトルものとかをイメージするのだけど、物語はむしろ衣緒花が何を抱えているのか、というのを探る物語となっている。
悪魔。それは、人間の願いをかなえる代わりに、代償としてその身を焼く、そんな存在。自らの意思で契約をする者もいるが、自分のあずかり知らぬところで取り付けれてしまうこともある。衣緒花はまさにそのパターン。それを祓うためには、自分でその願いをかなえてしまうこと。だが、その願いは完璧にかなえなければ、祓うことはかなわない。そのために、二人はともに行動をすることに。
衣緒花が炎を発するのは、その願いと関わること。モデルである彼女にとって、ブランドのショーモデル、それもファーストルックになることが当面の目標。そのために、日々の鍛錬などの努力を欠かさずに過ごしている。それでも、モデルとして一人前になるためには年齢的にも結果を出さねば、という限界が近づいている。そんな中で、後輩であり、ライバルでもあるロジィの存在。さらには、ストーカーらしき者の影もちらほら……。そして、炎を出すときは、そんな仕事関連。当然、そこに願いがあることはわかるのだが……
どちらかというと態度が大きく自信満々。そんな衣緒花でも感じている焦燥感。行動を共にする中での、彼女の苦悩。さらには、表向きにはわからない彼女の抱えた孤独。そういうものが徐々に明らかになっていく過程が実に丁寧。炎を発してしまう、というのは、ビジュアル的には当然、派手ではあるのだけど、物語の流れ自体は決して派手ではないと思う。思うのだけど、それでも続きがどうなるのか、というのが気になって読み進めることになる、というのは作りが丁寧だからこそ、じゃないかと思う。
前シリーズの『オーバーライト』が大好物だったのだけど、本作も今後がすごく楽しみ。

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Tag:小説感想電撃文庫池田明季哉

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