fc2ブログ

まやかしうらない処 信じる者は救われる

著者:山本巧次



本郷菊坂台にあるうらない処「瑠璃堂」。見料は高いが、よく当たるという千鶴だが、彼女に占いの才はない。卓越した観察眼と推理力。そして、口八丁。それらで客を納得させる。そんな千鶴の元に、差札の佐倉屋の主人が訪れる。彼が言うには、蔵に何者かが侵入した形跡があるが、何も盗まれていなかった、という。そんなころ、江戸の町では贋金が見つかり……
物語として一区切り、と言えば、一区切りなのだけど、続編ではこのまま続くの? それとも、新しい事件?
最初に書いたように、千鶴に占いの才はなく、その観察眼と推理力。そして、元岡っ引きである権次郎らの調査によって相手の情報を仕入れて、物事を当てて見せる。そんな存在。そんなところへ入ってきた依頼。店を貸し、店賃も払ってはくれているが、店を開けている様子がない借主は何者なのか? 蔵に侵入したが、何も取らずに出ていった賊は何者なのか? そんな依頼から物語が進んでいく……。冒頭で書いた佐倉屋の事件。被害はないが、何か意味があるはず。そして、店主と第一番頭の間にある確執。そんなものが見え隠れする中、江戸の町で贋金が見つかり、千鶴に佐倉屋が払った見料にもその贋金が……。そこで、ある程度のからくりはわかるのだが、その佐倉屋の番頭、さらに、続けざまに店主が死亡し……
中盤くらいまでは、結構、じっくりとストーリーが進む感じがあるのだが、佐倉屋の番頭、店主の死から、事件が贋金を巡ってのものだ、と判明し、一気にスピードアップ。
贋金、と言っても、日頃から小判などを取り扱っている差札すらをも騙す精巧なもの。しかし、それだけの技術を用いているのに、見つかった贋金の量は微々たるもの。どう考えても割に合わない。さらに、佐倉屋の賊事件に、殺された番頭が関わっていたとして、確執のあった店主がそれを知っていた様子はなく、なぜ、店主が殺されたのかがよくわからない。犯人の利益という観点で見た場合に、どうしてもチグハグさが残る。それは一体、何なのか?
読み終わってみると、結構、舞台となる佐倉屋やその周辺での複雑な人間関係があって、よくこれを考えたな、というのを思う。だからこそ、その構図が明らかになったときの爽快感というのが良かった。ただ、その一方で、事件の黒幕と言える存在についてはちょっと消化不良気味。一応の、その目的などは明らかにされるのだけど、その背景とかは明かされないまま……で終わってしまうため。それが、「このまま続くのか?」という最初の感想になった理由。
「瑠璃堂」を経営する千鶴、梅治、健次郎といったキャラクターのやり取りとかは楽しいし、次巻がどちらに転ぶのか、も含めて続編も楽しもうと思う。

No.6408

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想山本巧次

COMMENT 0