著者:嶺里俊介


デビュー5年目の作家、進木独行。身の回りで起きた奇妙な出来事を元にした話を綴っている中堅ホラー作家。そんな彼が体験した話を描いた連作短編集。
……ということになるのかな? と。一応、前後編の話を含めて11編を収録。
まず言えるのは、小説ではあるのだけど、何かエッセイっぽい話とかそういうものも多い。実際、あとがきによれば、語り部として進木独行というキャラクターは作ってあるが、著者が身近に体験したことを元にしたものもあるようだし。
『おーい』。学生時代からの友人で、ミステリー作家を目指していた守田。しかし、その夢には破れ、現在は実家の持つ不動産の賃料で生活をしている。引っ越し先を探していた私は、その守田の持つ物件の内覧をすることに。だが、その物件は少し前に住人が転落死をした事故物件。守田とともにそこへ訪れたのだが……。何か、呼び込むような声が……。そして……。結局、ソレが何なのかはわからないけれども、主人公と守田の友情。それでも、埋められない根源的な恐怖感。そんなものが印象に残った。
ただ、どちらかというと、ホラー要素の薄い、エッセイ的な話が印象に残ったかな?
『寿桜』。元上司・元橋の孫の結婚式に急遽出席することになった私。披露宴が終わり、思い出話をすることとなった。そこで、その元橋は、女性が苦手だ、ということになって……。著者は元々、NTTで働いていた人物。そしてこの元橋は、その時代の上司という扱いになっている。NTT以前、電電公社の時代、交換手が必要で、それは女性たちが担っていた。その交換手たちを指導する立場で……。女の園。そんな環境の中での、女性たち人間関係の複雑さ。一応、ホラーというか、オカルト的なオチはあるのだけど、男性視点で女性の人間関係のアレコレを見て苦手になった、という部分にすごく共感した。
同様に『経る時』。若手社員の研修会に参加した私。数か月間、寝食を共にする合宿形式の研修。若手対象なので、当然、参加者は20代~30代前半くらい。しかし、そこに一人、どう見ても40代をこえているような見た目の大場がいて……。この大場の病についての描写がどこまで本当なのかはわからない。けれども、その病自体はウェルナー症候群という実際にある病。思春期を終えると、急速に老化していく肉体。脳は老化しないが、肉体は老人のそれへとどんどん近づく。そんな大場を、最後までしっかりと「友」としてみた私。大場が最期に残した手紙が、すごく切なかった。
1編が30頁弱くらの話なので、結構、これって何なの? というような話も多いのだけど、そのごった煮の様な雰囲気とかが逆に、自分は好きかな?
No,6410

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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デビュー5年目の作家、進木独行。身の回りで起きた奇妙な出来事を元にした話を綴っている中堅ホラー作家。そんな彼が体験した話を描いた連作短編集。
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まず言えるのは、小説ではあるのだけど、何かエッセイっぽい話とかそういうものも多い。実際、あとがきによれば、語り部として進木独行というキャラクターは作ってあるが、著者が身近に体験したことを元にしたものもあるようだし。
『おーい』。学生時代からの友人で、ミステリー作家を目指していた守田。しかし、その夢には破れ、現在は実家の持つ不動産の賃料で生活をしている。引っ越し先を探していた私は、その守田の持つ物件の内覧をすることに。だが、その物件は少し前に住人が転落死をした事故物件。守田とともにそこへ訪れたのだが……。何か、呼び込むような声が……。そして……。結局、ソレが何なのかはわからないけれども、主人公と守田の友情。それでも、埋められない根源的な恐怖感。そんなものが印象に残った。
ただ、どちらかというと、ホラー要素の薄い、エッセイ的な話が印象に残ったかな?
『寿桜』。元上司・元橋の孫の結婚式に急遽出席することになった私。披露宴が終わり、思い出話をすることとなった。そこで、その元橋は、女性が苦手だ、ということになって……。著者は元々、NTTで働いていた人物。そしてこの元橋は、その時代の上司という扱いになっている。NTT以前、電電公社の時代、交換手が必要で、それは女性たちが担っていた。その交換手たちを指導する立場で……。女の園。そんな環境の中での、女性たち人間関係の複雑さ。一応、ホラーというか、オカルト的なオチはあるのだけど、男性視点で女性の人間関係のアレコレを見て苦手になった、という部分にすごく共感した。
同様に『経る時』。若手社員の研修会に参加した私。数か月間、寝食を共にする合宿形式の研修。若手対象なので、当然、参加者は20代~30代前半くらい。しかし、そこに一人、どう見ても40代をこえているような見た目の大場がいて……。この大場の病についての描写がどこまで本当なのかはわからない。けれども、その病自体はウェルナー症候群という実際にある病。思春期を終えると、急速に老化していく肉体。脳は老化しないが、肉体は老人のそれへとどんどん近づく。そんな大場を、最後までしっかりと「友」としてみた私。大場が最期に残した手紙が、すごく切なかった。
1編が30頁弱くらの話なので、結構、これって何なの? というような話も多いのだけど、そのごった煮の様な雰囲気とかが逆に、自分は好きかな?
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