著者:知念実希人


研修を経て、循環器内科医となった諏訪野良太。学会発表を終えた打ち上げの場で、彼は研修医時代の思い出を尋ねられる。そんなとき、諏訪野の頭に浮かんだのは……
という、シリーズ第2作となる連作短編集。全3編を収録。
まず、物語の内容とは一切関係がないのだけど、著者の作品のスターシステム的な部分が色々と出てきているな、というのを感じた。プロローグなどで、諏訪野が一緒に飲んでいるのは、『天久鷹央』シリーズの小鳥遊と鴻池だし、作中でも他作品のキャラクターの影がちらほらと……
1編目『救急夜噺』。夜勤をしている諏訪野たちの元へとやってきた患者。それは、かつて、諏訪野に「入院をさせろ」と迫った男だった。幸い、今回は検査などにも協力的。糖尿病を患っているが治療をしているような印象はない。そんな男だが、不可解な昏倒を何度も繰り返し……。一体、何が原因なのか? 検査結果をつぶさに見た諏訪野がたどり着いた結論は……
この昏倒する原因そのものは、多少、知識があれば察することが出来るものじゃかと思う。ただ、そこからハウダニットからホワイダニットへ……。男が歩んできた生涯。そんな中で、せめて一目でも、という部分が切なかった。
2編目『割れた鏡』。形成外科で研修中の諏訪野。そこに現われたのは。整形をしてほしい、というスキャンダルだらけの女優。だが、その顔は手術を繰り広げた結果、もはや、手を入れること自体が危険を伴う状態になっていた。そんな状況になってまで、手術を求める理由とは?
『醜形恐怖症』という病。勿論、これは精神疾患であり、治療の対象とは言える。ただ、視線に対する恐怖症だったりとかとは異なり、自分自身に対する劣等感を抱えたそれは、自分の自分に対する恐怖であり、長期間の治療というのが困難。そうなると、自殺などを防ぐためには、手術をするしかない……。まず印象に残るのは、その厄介さ。でも、諏訪野とは、別のところに違和感を覚え……
なぜ、整形をしようとするのか? 普通の発想とは、真逆の終着点に見事にしてやられた感。
そして、3編目『二十五年目の再会』。ホスピス病棟での研修中の諏訪野。そこで彼は一人の患者のケアを任される。その患者は、救急病とにいた頃、常連のようにやってきては言葉を交わしていた男・広瀬だった……
ここは完全に諏訪野自身の掘り下げ。患者を担当し、その最期をみとることで、ホスピス病棟の在り方を実感できるようになる。この説明はたしかに事実だろう。けれども、なぜ、一人だけ、なのか? その中に込められた意図は……。ここについては、これ以上書かない。けれども、諏訪野がすごく周囲に恵まれているのだな、というのだけは強く思った。
No.6420

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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まず、物語の内容とは一切関係がないのだけど、著者の作品のスターシステム的な部分が色々と出てきているな、というのを感じた。プロローグなどで、諏訪野が一緒に飲んでいるのは、『天久鷹央』シリーズの小鳥遊と鴻池だし、作中でも他作品のキャラクターの影がちらほらと……
1編目『救急夜噺』。夜勤をしている諏訪野たちの元へとやってきた患者。それは、かつて、諏訪野に「入院をさせろ」と迫った男だった。幸い、今回は検査などにも協力的。糖尿病を患っているが治療をしているような印象はない。そんな男だが、不可解な昏倒を何度も繰り返し……。一体、何が原因なのか? 検査結果をつぶさに見た諏訪野がたどり着いた結論は……
この昏倒する原因そのものは、多少、知識があれば察することが出来るものじゃかと思う。ただ、そこからハウダニットからホワイダニットへ……。男が歩んできた生涯。そんな中で、せめて一目でも、という部分が切なかった。
2編目『割れた鏡』。形成外科で研修中の諏訪野。そこに現われたのは。整形をしてほしい、というスキャンダルだらけの女優。だが、その顔は手術を繰り広げた結果、もはや、手を入れること自体が危険を伴う状態になっていた。そんな状況になってまで、手術を求める理由とは?
『醜形恐怖症』という病。勿論、これは精神疾患であり、治療の対象とは言える。ただ、視線に対する恐怖症だったりとかとは異なり、自分自身に対する劣等感を抱えたそれは、自分の自分に対する恐怖であり、長期間の治療というのが困難。そうなると、自殺などを防ぐためには、手術をするしかない……。まず印象に残るのは、その厄介さ。でも、諏訪野とは、別のところに違和感を覚え……
なぜ、整形をしようとするのか? 普通の発想とは、真逆の終着点に見事にしてやられた感。
そして、3編目『二十五年目の再会』。ホスピス病棟での研修中の諏訪野。そこで彼は一人の患者のケアを任される。その患者は、救急病とにいた頃、常連のようにやってきては言葉を交わしていた男・広瀬だった……
ここは完全に諏訪野自身の掘り下げ。患者を担当し、その最期をみとることで、ホスピス病棟の在り方を実感できるようになる。この説明はたしかに事実だろう。けれども、なぜ、一人だけ、なのか? その中に込められた意図は……。ここについては、これ以上書かない。けれども、諏訪野がすごく周囲に恵まれているのだな、というのだけは強く思った。
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