著者:東崎惟子


小国ノーヴェルラント。邪竜に脅かされるこの国は、神竜と契約を結び、その庇護下で繁栄していた。毎月、7人の子供を生贄とすることで……。その国で唯一、竜と言葉を交わすことが出来る少女ブリュンヒルドは、「竜の巫女」として神竜に仕えていた。だが、彼女が広い、友として接していた少女が贄とされてしまったことで、その状況に疑問を抱き……
『竜殺しのブリュンヒルド』と世界観を同じにする物語。文庫折り返しなどに綴られた粗筋を見ると、どういう関係性なのかはすぐにわかるのだけど、本編で判明するのは最後になってから、なのでここでは敢えて触れない。
で、物語は「竜の巫女」であるブリュンヒルドが、国を守ってくれる神竜の存在に対して疑念を抱く、というところから始まる。神竜は邪竜から守ってくれる。生贄とひきかえに。しかし、その邪竜は本当にいるのか? 従者であるファーヴニル、幼馴染である王子シグルズ、シグルズの騎士であるスヴェンと共に禁忌と言える領外への調査に向かう。だが、そのことを神竜が知ったとき……
神竜こそが元凶とわかり、その本性を現した神竜。ブリュンヒルドたちは、その討伐を目指すこと。しかし、いざ、それを成し遂げたと思ったとき、シグルズの様子が急変し……
悪の元凶と言える「神竜」。その存在は常に物語の中にあり、その強大な存在に常に翻弄されることに。その中で、主要人物である4人の心情がこれでもか、と描かれていく。
幼なじみであり、互いに想いを抱いていたブリュンヒルドとシグルズ。だが、神竜を倒した、と思った瞬間にシグルズは急変してしまう。シグルズに裏切られてなお、シグルズへの想いを断ち切れないブリュンヒルド。そのシグルズは、自分の身体が自分のものでなくなる中でもブリュンヒルドへの想いは続く。だが、同時に彼女を傷つけた罪悪感に自分が許されない、という思いを抱き続ける。そして、従者の二人。裏社会で生き、人を好きになる、という感情がわからないファーヴニル。だが、必死にブリュンヒルドを守り、その思いを理解しようとする中で……。一方のスヴェンは、シグルズの騎士として、忠実に動きつつ、しかし、それが正しいのか? 忠誠とは何か? という迷いに苛まれていく。だからこそ、ブリュンヒルドとファーヴニルの関係性に対しても思うことがあり……
ストーリー展開そのものは、決して奇をてらったものではない。でも、だからこそ、状況の中での、それぞれの想いがストレートに感じられ、その交錯を存分に感じられる物語となっていると思う。そして、その物語が終わって、前作との繋がりが見えたとき……
この皮肉な終わり方、というのも一つの味、と言えるのだろう。
No.6421

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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小国ノーヴェルラント。邪竜に脅かされるこの国は、神竜と契約を結び、その庇護下で繁栄していた。毎月、7人の子供を生贄とすることで……。その国で唯一、竜と言葉を交わすことが出来る少女ブリュンヒルドは、「竜の巫女」として神竜に仕えていた。だが、彼女が広い、友として接していた少女が贄とされてしまったことで、その状況に疑問を抱き……
『竜殺しのブリュンヒルド』と世界観を同じにする物語。文庫折り返しなどに綴られた粗筋を見ると、どういう関係性なのかはすぐにわかるのだけど、本編で判明するのは最後になってから、なのでここでは敢えて触れない。
で、物語は「竜の巫女」であるブリュンヒルドが、国を守ってくれる神竜の存在に対して疑念を抱く、というところから始まる。神竜は邪竜から守ってくれる。生贄とひきかえに。しかし、その邪竜は本当にいるのか? 従者であるファーヴニル、幼馴染である王子シグルズ、シグルズの騎士であるスヴェンと共に禁忌と言える領外への調査に向かう。だが、そのことを神竜が知ったとき……
神竜こそが元凶とわかり、その本性を現した神竜。ブリュンヒルドたちは、その討伐を目指すこと。しかし、いざ、それを成し遂げたと思ったとき、シグルズの様子が急変し……
悪の元凶と言える「神竜」。その存在は常に物語の中にあり、その強大な存在に常に翻弄されることに。その中で、主要人物である4人の心情がこれでもか、と描かれていく。
幼なじみであり、互いに想いを抱いていたブリュンヒルドとシグルズ。だが、神竜を倒した、と思った瞬間にシグルズは急変してしまう。シグルズに裏切られてなお、シグルズへの想いを断ち切れないブリュンヒルド。そのシグルズは、自分の身体が自分のものでなくなる中でもブリュンヒルドへの想いは続く。だが、同時に彼女を傷つけた罪悪感に自分が許されない、という思いを抱き続ける。そして、従者の二人。裏社会で生き、人を好きになる、という感情がわからないファーヴニル。だが、必死にブリュンヒルドを守り、その思いを理解しようとする中で……。一方のスヴェンは、シグルズの騎士として、忠実に動きつつ、しかし、それが正しいのか? 忠誠とは何か? という迷いに苛まれていく。だからこそ、ブリュンヒルドとファーヴニルの関係性に対しても思うことがあり……
ストーリー展開そのものは、決して奇をてらったものではない。でも、だからこそ、状況の中での、それぞれの想いがストレートに感じられ、その交錯を存分に感じられる物語となっていると思う。そして、その物語が終わって、前作との繋がりが見えたとき……
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