怪盗フラヌールの巡回

0 0
著者:西尾維新



亡き父は、大怪盗だった! そのことを知った弟は失踪し、妹は精神に異常をきたした。傷ついた弟、妹のため、長男である道足は、「2代目・怪盗フラヌール」を襲名。父が盗んだものを返却することに。今度の返却物は、竜宮城から盗んだ玉手箱!? そこは海底に作られた学生のいない大学。そして、父の宿敵だったベテラン刑事と、新世代の名(ウルトラ)探偵が。しかも、不可解な事件まで起こってしまって……
これは、新シリーズ……なのか?
物語の筋は、冒頭に書いた通り。ただし、普段、道足は、ルポライターとして活動をしており、それは父の(表の)職を継ぐ、ということ。そして、ベテラン刑事の東尋坊は、父の友人でもあり、また、道足にとっても実の父のように慕っている相手。一方の名探偵・虎春花とも旧知の仲で、警察の不正などを何度も暴いているために、警察へは出入り禁止とされている状況。そんな面々が揃った海底の研究施設で事件が……
そもそも、父が盗んだ玉手箱は「開けてはならない」とされていて、その正体はよくわからない。そして、この施設そのものも……。施設の中にいるのは、6人の研究者たちと、東尋坊を含めた警察官3人、道足、虎春花の合計11人。玉手箱の正体を探るためにも、ライターとして研究者たちに取材をしながら、玉手箱を返却する機会を狙うが……
研究者たちには研究者たちなりの鬱屈した想いなどがあり、また、それは道足自身もそう。施設は、特殊な環境にはあるものの、どうやら医学を中心に研究している施設らしい。だが、何かを隠している様子が見受けられる。それが、事件によって明らかになり。
物語のテーマとすれば、善意と悪意の危うさ、みたいなものなのかな? と。父が盗んだものを返すために、2代目の怪盗となった道足。勿論、父がしたことへの罪悪感とかもあるし、(特に)精神に異常をきたした妹への想いもある。と同時に、父のしたことの贖罪という側面もある。しかし、手箱の正体が事件を招く、という皮肉な結果に繋がってしまう。さらに、父の正体が判明したことで、怪盗となった道足とは別に……
道足の行動が、様々な形で皮肉な結果になっていく様、というのが本作の見どころじゃないかと思う。ちょうど、覆水盆に返らず、という諺のように。
終盤の事件解決とかは、ある意味、著者らしく、何か「あれ?」というような部分もあるのだけど、物語の転がし方が印象に残った。

No.6436

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

ページトップ