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秘境駅のクローズド・サークル

著者:鵜林伸也



全5編を収録した短編集。
各編で話の繋がりはなく、それぞれ独立した話ではあるのだけれども、折り返しの内容紹介で書かれているように、不可解な状況を目の当たりにして、登場人物たちがそれぞれ、「こうじゃないか?」と議論をしながら、というのが一つのパターンとなっている。
1編目『ボールがない』。甲子園出場経験もある野球部の1年生の俺。2年生と監督が練習試合に行っているその日、俺たち1年生は学校で自主練をしていた。しかし、その練習中、数えられていたはずのボールが1つ。練習試合に敗れ、不機嫌な監督は、ボールが見つかるまで探せと命じてきて……
タイトルの通り、ボールがない。確かにグラウンドは狭いとはいいがたい。しかし、大人数で探しているのに見つからない、というのはおかしい。だとすれば、あるのはグラウンドの外? 可能性があるのは、練習中に出た特大のホームラン。けれども、そのボールはしっかりと回収していた。……となると? ある人物が出した仮説と、その検証による崩壊。そのひっくり返しの連続は面白かった。ただ、その推理のたどり着いた先……で、梯子を外された感はあったかな?
2編目『夢も死体も湧き出る温泉』。田舎の温泉街の飲食店の息子である俺は、人気動画配信者が、街の名物である「手掘り温泉」を紹介しているのを発見する。これは! と、掘るために使うシャベルレンタルを始めると大盛況。ところが、その温泉から少し前に閉業した旅館の主の他殺体が掘り出されてしまって……
なぜ、温泉から死体が発見されたのか? 多くの人が訪れているところに遺体を持っていけば、それだけで注目されてしまう。勿論、その場で殺すなんていうのはもってのほか。そんな不可解な状況を、主人公の実家の飲食店でアレコレと話し合い……。犯人の計画と、それを失敗に導いてしまった偶然の組み合わせが印象的だった。
個人的に好きなのは3編目『宇宙倶楽部へようこそ』。母の元へと届いた一通のメール。そこに添付されていたのは、一枚の写真。その写真は一体、何なのか? どうやら天体のようだ、ということで、天文部……として活動をしている宇宙倶楽部。その面々が、写真の謎について考えて……。謎解き自体は、そこまで複雑なものではない。ないのだけど、主人公の「星が嫌い」というようなトラウマの理由であったりとか、そういうすべての謎が綺麗に解きほぐされる爽快感が抜群だった。

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Tag:小説感想鵜林伸也

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