著者:神田暁一郎


「自分より身長の低い男子は嫌」 低身長を理由に告白を断られたことがトラウマとなっている下野水希。すっかりひねくれてしまった彼だが、なぜか構ってくる女子がいる。彼女の名は高瀬菜央。誰にでも優しいクラスの人気者で、高身長。隣にいるだけで劣等感を覚えてしまう彼女。けれども、大人びているのにあどけなかったり、距離感が近かったり……
あとがきでも書かれているけど、ライトノベルレーベルの作品としては珍しい中学生が主人公のラブコメ作品。
読んでいて思ったのは、主人公が中学生というのが絶妙だ、ということ。冒頭にも書いたように、第二次性徴期になり、皆の身長が伸びていく時期。そんな中で、取り残されたように身長の伸びない水希。しかも、好きだった相手にフラれ、小学生の頃は運動能力の高さで得意だったバスケットも、体格差、という自分自身では何ともしがたい理由で挫折。成長の時期というのは人それぞれ、と言っても劣等感に、というのはすごくわかる。
その結果、クラスでも浮いた存在になった水希に、ただ一人、声をかけてくるのが高瀬さん。皆に優しくて、という女子なのはわかっているが、それでも何故? しかも、彼女は172センチという高身長で、近くにいるだけで劣等感を感じてしまう。だから離れよう、とは思いつつも、なぜか彼女は構ってくる。そんな彼女を鬱陶しい、と思うこともあるけど、でも日常の中でちょっとずつ交流を深め、彼女の人となりを理解していく。
本当に描かれているのは、中学生の日常の中のちょっとしたこと。特別なこと、っていうのは全くない。その全くないところがいい。ないからこそ、水希の想いとか、そういうのが親近感を持って読めるし、もっと言うと、自分みたいなおっさんにとっては「懐かしい」という感傷を覚える。
物語の中盤には、二人のすれ違いとかもあるんだけど、これも、中学生だからこそ、じゃないかな、と思う。いや、高校生だろうと、大人だろうと全くないとは言えないのだろうけど、この辺りの年代になっちゃうと「大人げない」になってしまうし、そういう事件が起きたときの解決も本作のようには上手くいかないはず。
主人公たちが中学生である、という設定が完璧に活かされ、その上で二人の関係性が丁寧に描かれる。そんな作品だと思う。
No.6449

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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「自分より身長の低い男子は嫌」 低身長を理由に告白を断られたことがトラウマとなっている下野水希。すっかりひねくれてしまった彼だが、なぜか構ってくる女子がいる。彼女の名は高瀬菜央。誰にでも優しいクラスの人気者で、高身長。隣にいるだけで劣等感を覚えてしまう彼女。けれども、大人びているのにあどけなかったり、距離感が近かったり……
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読んでいて思ったのは、主人公が中学生というのが絶妙だ、ということ。冒頭にも書いたように、第二次性徴期になり、皆の身長が伸びていく時期。そんな中で、取り残されたように身長の伸びない水希。しかも、好きだった相手にフラれ、小学生の頃は運動能力の高さで得意だったバスケットも、体格差、という自分自身では何ともしがたい理由で挫折。成長の時期というのは人それぞれ、と言っても劣等感に、というのはすごくわかる。
その結果、クラスでも浮いた存在になった水希に、ただ一人、声をかけてくるのが高瀬さん。皆に優しくて、という女子なのはわかっているが、それでも何故? しかも、彼女は172センチという高身長で、近くにいるだけで劣等感を感じてしまう。だから離れよう、とは思いつつも、なぜか彼女は構ってくる。そんな彼女を鬱陶しい、と思うこともあるけど、でも日常の中でちょっとずつ交流を深め、彼女の人となりを理解していく。
本当に描かれているのは、中学生の日常の中のちょっとしたこと。特別なこと、っていうのは全くない。その全くないところがいい。ないからこそ、水希の想いとか、そういうのが親近感を持って読めるし、もっと言うと、自分みたいなおっさんにとっては「懐かしい」という感傷を覚える。
物語の中盤には、二人のすれ違いとかもあるんだけど、これも、中学生だからこそ、じゃないかな、と思う。いや、高校生だろうと、大人だろうと全くないとは言えないのだろうけど、この辺りの年代になっちゃうと「大人げない」になってしまうし、そういう事件が起きたときの解決も本作のようには上手くいかないはず。
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