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世界の望む静謐

著者:倉知淳



人を殺めてしまった者たち。その前に現われるのは、死神のような容姿をした刑事・乙姫。犯人たちは、そんな乙姫の追及を何とかかわそうと思うが……。
という倒叙作品を4編収録した連作短編集。
1編目『愚者の選択』。連載20年を超える大人気ミステリー漫画の担当編集をする桑島。原稿を取りに来た桑島に、漫画家が話したのは、この連載を終了し、新たな漫画を描きたい、というもの。何とか思いとどまらせようとする桑島だったが、揉み合いの中、漫画家を刺してしまい……
強盗の仕業に見せて、という工作をしてその場を後にした桑島。そんな彼の前に現われる乙姫。強盗の仕業ではないか? しかし、部屋の鍵は特殊な仕様で複製できない。アシスタトなどにも聞き込みが続けられる中……。この話に関しては、何よりも面白かったのが、桑島が崩される部分以上に、アシスタントたちの様子に感じる違和感の正体。アシスタントも含めて、会社組織として運営されていた漫画。他の現場よりもはるかに環境が良い、というが、それも死んだ漫画家がいるからこそ。それぞれ、失業の危機のはずなのに、なぜか余裕がある。それはなぜか? 金の卵を産む鶏の寓話が作中に出てくるのだけど、桑島がしたことは果たして、愚者の選択だったのか、それとも? そんな思いを残す計画だった。
個人的に好きなのは2編目『一等星かく輝けり』。もう一旗揚げるため、プロモーターに仕事を依頼していたかつての人気歌手・新藤。しかし、そのプロモーターに金を奪い取られ、その相手に手をかけてしまった。現場の事務所には自分の契約書が。動機という点で、それを発見されれば……。そこで、事務所にあった契約書をすべて奪い取ることにしたのだが……
こちらも同様に、乙姫が執拗に迫ってきて……という部分は同じなのだけど、最後に新藤が追い詰められる部分に笑ってしまった。プロモーターがやっていた行為、性格というのが上手く効いている。それまでのやりとりでも、これでもかと、プロモーターの性格とかは描かれていたのだけど、まさかのオチだもの。
倒叙作品って、結構、語りづらい部分はあるのだけど、2編目のオチとか、本当に思わぬ落とし穴があってそれが面白かった。まぁ、それ以前に、最初から疑われる要素はタップリだったわけだけど……

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Tag:小説感想倉知淳

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