著者:潮谷験


「オスロ昏睡病」 予兆なく強烈な眠気を訴えるようになり、半月後には完全な昏睡状態に陥る。数週間から半年近くすると目覚めるが、深刻な記憶障害をもたらし、一生、赤子同然の精神状態になってしまう原因不明の難病。長らく治療不能であったその病だったが、関本教授の確立した治療法によって回復が出来るようになった、ただし、その治療を受けた者には薔薇のような形の腫瘍ができる、という後遺症を伴うが。そんな関本教授と、元患者の高校生が何者かに殺害された。京都府警の警部補で、自らも患者であった八嶋は、その事件の捜査に乗り出すのだが……
間違いなく言えるのは、思わぬ展開だったなぁ、ということかな?
冒頭に書いたようにオスロ昏睡病という難病。その病気が物語の核となる物語。被害者の一人である高校生・兵頭水奈は、(元)患者でつくる「はなの会」という団体に所属しており、捜査をすすめる中、水奈はその会のメンバーとの間である実験を行っていた、ということが判明する。それは、治療の結果として出てきた薔薇を患者同士でくっつける、というもの。それをすると、なぜか不可解な白昼夢が見られる、というもので……
病の治療の結果としてなぜか出来てしまう薔薇。それが出来る場所は人それぞれで、胴体など服などで隠せる場所の場合もあれば、頭など目立つ場所に出来ることもある。もし、それを切り取ってしまっても問題は起きないが、しばらくすると再び出来てしまう。この時点で、結構、不可解なものなのだけど、その薔薇同士をくっつけると……と、ますます奇妙な現象が。そんなことを調べていた水奈が殺され、さらに、彼女と実験をした仲間もまた……。薔薇は一体何なのか? そして、犯人は誰なのか? というのが謎となっていく。
で、殺人事件は起きているものの、最大の謎と言えるのは、薔薇の方。先に書いたように、薔薇同士をくっつけると奇妙な白昼夢を見ることが出来る。ただし、年齢制限がある。そして、その白昼夢を見た者の中には、なぜかその後、人生観を変えてしまったような者も……。年齢制限により、八嶋は見ることが出来ないのだが、思い出すのはかつて想いを抱いていた同じ病を克服した少女のこと。彼女もまた、ある日、突然に態度が変わってしまった。一体、白昼夢は何なのか? 薔薇は何なのか? それが事件とどう繋がるのか……。治療法確立までの過程とか、そういうものにまで物語が掘り下げられていき、その正体。その中でつきつけられる「自己とは何か?」の問い、というのは色々と考えさせられ、そして、SF作品的な要素も多分に含んだものとなっている。そして……
これだけ、薔薇とは何か? を追求しながら、敢えて、そこから離れたところから犯人特定へ、という流れは完全に意表を突かれた。いや、まったく関係ないわけではないのだけど、薔薇の存在を使ったトリックとか、そういうわけではない、という意味で。この犯人の動機も、独善的ではあるものの、結構考えさせられるものではある。無条件にこうだ、と思いがちだけど……という意味で。ただ、ちょっと肩透かしと思うところも無きにしも非ずかな? とは思うけど。
そう言いつつ、「自己とは何か?」みたいな問い。そして、不可思議な薔薇の存在と、色々と興味を持って読ませる内容だったというのは確か。
No.6463

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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「オスロ昏睡病」 予兆なく強烈な眠気を訴えるようになり、半月後には完全な昏睡状態に陥る。数週間から半年近くすると目覚めるが、深刻な記憶障害をもたらし、一生、赤子同然の精神状態になってしまう原因不明の難病。長らく治療不能であったその病だったが、関本教授の確立した治療法によって回復が出来るようになった、ただし、その治療を受けた者には薔薇のような形の腫瘍ができる、という後遺症を伴うが。そんな関本教授と、元患者の高校生が何者かに殺害された。京都府警の警部補で、自らも患者であった八嶋は、その事件の捜査に乗り出すのだが……
間違いなく言えるのは、思わぬ展開だったなぁ、ということかな?
冒頭に書いたようにオスロ昏睡病という難病。その病気が物語の核となる物語。被害者の一人である高校生・兵頭水奈は、(元)患者でつくる「はなの会」という団体に所属しており、捜査をすすめる中、水奈はその会のメンバーとの間である実験を行っていた、ということが判明する。それは、治療の結果として出てきた薔薇を患者同士でくっつける、というもの。それをすると、なぜか不可解な白昼夢が見られる、というもので……
病の治療の結果としてなぜか出来てしまう薔薇。それが出来る場所は人それぞれで、胴体など服などで隠せる場所の場合もあれば、頭など目立つ場所に出来ることもある。もし、それを切り取ってしまっても問題は起きないが、しばらくすると再び出来てしまう。この時点で、結構、不可解なものなのだけど、その薔薇同士をくっつけると……と、ますます奇妙な現象が。そんなことを調べていた水奈が殺され、さらに、彼女と実験をした仲間もまた……。薔薇は一体何なのか? そして、犯人は誰なのか? というのが謎となっていく。
で、殺人事件は起きているものの、最大の謎と言えるのは、薔薇の方。先に書いたように、薔薇同士をくっつけると奇妙な白昼夢を見ることが出来る。ただし、年齢制限がある。そして、その白昼夢を見た者の中には、なぜかその後、人生観を変えてしまったような者も……。年齢制限により、八嶋は見ることが出来ないのだが、思い出すのはかつて想いを抱いていた同じ病を克服した少女のこと。彼女もまた、ある日、突然に態度が変わってしまった。一体、白昼夢は何なのか? 薔薇は何なのか? それが事件とどう繋がるのか……。治療法確立までの過程とか、そういうものにまで物語が掘り下げられていき、その正体。その中でつきつけられる「自己とは何か?」の問い、というのは色々と考えさせられ、そして、SF作品的な要素も多分に含んだものとなっている。そして……
これだけ、薔薇とは何か? を追求しながら、敢えて、そこから離れたところから犯人特定へ、という流れは完全に意表を突かれた。いや、まったく関係ないわけではないのだけど、薔薇の存在を使ったトリックとか、そういうわけではない、という意味で。この犯人の動機も、独善的ではあるものの、結構考えさせられるものではある。無条件にこうだ、と思いがちだけど……という意味で。ただ、ちょっと肩透かしと思うところも無きにしも非ずかな? とは思うけど。
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