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動機探偵 名村詩朗の洞察

著者:喜多喜久



「人間らしさ」を持ったAI開発を研究している令王大学准教授の名村詩朗。そんな名村研究室の特任助手となった鈴代若葉は、「人間らしさ」である非論理的な謎を集める業務を請け負って……
というシリーズの第2作。全4編を収録。
1編目は、ネットゲームのフレンドがIDを削除した理由を探る話。そのIDを消した相手、というのは、そのゲームの中でもトップクラスのランカー。しかし、ある日、突然、姿を消してしまったという……
これはちょっと異質な物語かな? と。確かに「なぜIDを消したのか?」とはあるのだけど、相手はあくまでもネット上でだけの付き合い。プライバシーを知らない相手を探る。そういう意味では、普通の「人探し」みたいな印象の残る話。ただ、そんな中で、探偵役である名村は、AI開発、コンピュータなどに詳しい、ということでネット上でのやりとりの文章の癖を探して……という迫り方が印象的だった。
3編目は、記憶喪失となった患者が、なぜ記憶が戻らないのか? という物語。記憶喪失、とはいえ、時間の経過、その中での体験などから記憶は戻っていくもの。しかし、その患者については……。しかも、何やら隊員を嫌がっている様子も見えて……
その患者が何者か、というところから、その理由についてまで……。過去の出来事などを探りっていう物語が面白かった。この内容、医学的にどこまで正しいのか、というのはわからないけれども、そこを抜きにして考えれば、十分に納得できるものだった。
4編目は、有名俳優が自殺した。その理由を探る、というもの。
この話はなぜ、自殺をしてしまったのか? という直接的な理由ではなくて、そこに至るまでの過程を探るかたちに。そこで浮かび上がってくる人物は……。科学的研究と倫理のはざまにある問題。「これを研究したい」という場合、その状況にある人がいなければならない。だが、その条件に適合する人が多いのか? と言えば、そうとも言えない。ならば……。流石に、この物語は誇張だと思いたい。でも、何千、何万人という研究者の中には……。そういう気になってしまう(実際、とんでもない発言と化する研究者みたいなのはいるしなぁ……)
途中、若葉と名村の間に恋愛みたいなものを匂わせる部分があるけど、そこはなんか中途半端な印象がある。これは、今後、シリーズが続く中で、そちら方面も進むのかな?

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Tag:小説感想喜多喜久

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