著者:天祢涼


格安家賃のシェアハウスに住むこととなった元天才子役の五月女リオ。しかし、その家賃と引き換えに、大家である大家(シェアハウスの大家の苗字が大家という名前)が営んでいる「レンタル家族」業を手伝うことに。リオは人気漫画家の妹役から、訳あり老人の息子役まで、様々なことをすることになって……
という連作短編集。全6編を収録。
まず最初に言うと、タイトルから大きく勘違いしていた。それは何か、というと、家族が全員探偵業(もしくは、それに近い業種)というようなものだと思っていた、ということ。ところが、いざ読み始めると、あくまでもやっているのは「レンタル家族」であり、探偵業ではない。ただし、レンタル家族として仕事をしているうちに、不可解な事件が起こり、そのなぞを解く必要がある、というような形に展開していく。
で、1編目『俺の妹があんなことに!』。有名漫画家のもとに「レンタル妹」として派遣されることになったリオ。その漫画家・漫月は「妹萌え」作品のモデルとして雇ったのだという。むさくるしい漫月を「お兄ちゃん」と呼んだり……とか、葛藤はあるものの、それをこなし、漫画の執筆も順調。だが、最終日、花火大会に出かけた日、屋内にあったイラストに悪戯書きがされる、という事件が起こって……
「○○萌え」なんて言い方自体が、随分と懐かしい気がするのはさておこう……。事件そのものの謎解きは、非常にオーソドックスな本格モノのそれ。密室状態の漫月の家で起きた事件。以前に妹役として雇われた、という怪しい女もいる。その女が犯人か……と思いきや、しかし、その女には不可能という根拠があって……。現代だからこそのトリックと、そこに至るまでの論理をメインに添えたやり取りが楽しかった。
3編目『息子の水着にはわけがある』。リオへの依頼をしたのは、元水泳選手で、孫は日本代表にも選ばれたという老人。リオは妻が亡きあとに付き合った女性との間に生まれた息子で、孫にとっては叔父ということにしてほしい、という。だが……
まずこのエピソードに関して言えるのは、非常なおバカエピソードだなぁ、ということ。元水泳選手で、孫に対してもスパルタに対応していた。その中で、いつもスイマーであることを忘れるな、とずっと海パンで生活をしろ、と伝えていた。孫は、その教えを守り、秋だというのに自宅で海パン一丁。さらに、息子なら、と本当は女であるリオにも同じような格好をするように要求。……この時点で帰っていいと思う。そんなとき、孫が大会の記念で手に入れた、という茶碗が行方不明となり、その後、壊れた状態で発見され……
普通に考えれば、犯人は孫。けれども、その孫は海パン一丁なので隠したりすることができないというアリバイが……。アホか! それを崩してってことになるんだけど、アホすぎる状況に笑う。そんなエピソードだった。
で、そのようにレンタル家族業をし、その中でシェアハウスの住人も増えて……という中、リオの両親が現れたり、大家である大家の家の事情が出てきたり……と終盤のエピソードが広がっていくのだけど、読み終わってみると、作中で描かれる事件の性質がちゃんと意味を持っている、というのに驚かされる。レンタル家族業を「社会貢献の一環」と言っている大家だけど、なぜかそれが社会貢献なのか? というものがある理由とかそういうのはしっかりと判明しるため。そうやって考えると、連作短編形式ではあるのだけど、長編としての構想というのもしっかりと練られているんだな、というのが良くわかる。
No.6479

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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格安家賃のシェアハウスに住むこととなった元天才子役の五月女リオ。しかし、その家賃と引き換えに、大家である大家(シェアハウスの大家の苗字が大家という名前)が営んでいる「レンタル家族」業を手伝うことに。リオは人気漫画家の妹役から、訳あり老人の息子役まで、様々なことをすることになって……
という連作短編集。全6編を収録。
まず最初に言うと、タイトルから大きく勘違いしていた。それは何か、というと、家族が全員探偵業(もしくは、それに近い業種)というようなものだと思っていた、ということ。ところが、いざ読み始めると、あくまでもやっているのは「レンタル家族」であり、探偵業ではない。ただし、レンタル家族として仕事をしているうちに、不可解な事件が起こり、そのなぞを解く必要がある、というような形に展開していく。
で、1編目『俺の妹があんなことに!』。有名漫画家のもとに「レンタル妹」として派遣されることになったリオ。その漫画家・漫月は「妹萌え」作品のモデルとして雇ったのだという。むさくるしい漫月を「お兄ちゃん」と呼んだり……とか、葛藤はあるものの、それをこなし、漫画の執筆も順調。だが、最終日、花火大会に出かけた日、屋内にあったイラストに悪戯書きがされる、という事件が起こって……
「○○萌え」なんて言い方自体が、随分と懐かしい気がするのはさておこう……。事件そのものの謎解きは、非常にオーソドックスな本格モノのそれ。密室状態の漫月の家で起きた事件。以前に妹役として雇われた、という怪しい女もいる。その女が犯人か……と思いきや、しかし、その女には不可能という根拠があって……。現代だからこそのトリックと、そこに至るまでの論理をメインに添えたやり取りが楽しかった。
3編目『息子の水着にはわけがある』。リオへの依頼をしたのは、元水泳選手で、孫は日本代表にも選ばれたという老人。リオは妻が亡きあとに付き合った女性との間に生まれた息子で、孫にとっては叔父ということにしてほしい、という。だが……
まずこのエピソードに関して言えるのは、非常なおバカエピソードだなぁ、ということ。元水泳選手で、孫に対してもスパルタに対応していた。その中で、いつもスイマーであることを忘れるな、とずっと海パンで生活をしろ、と伝えていた。孫は、その教えを守り、秋だというのに自宅で海パン一丁。さらに、息子なら、と本当は女であるリオにも同じような格好をするように要求。……この時点で帰っていいと思う。そんなとき、孫が大会の記念で手に入れた、という茶碗が行方不明となり、その後、壊れた状態で発見され……
普通に考えれば、犯人は孫。けれども、その孫は海パン一丁なので隠したりすることができないというアリバイが……。アホか! それを崩してってことになるんだけど、アホすぎる状況に笑う。そんなエピソードだった。
で、そのようにレンタル家族業をし、その中でシェアハウスの住人も増えて……という中、リオの両親が現れたり、大家である大家の家の事情が出てきたり……と終盤のエピソードが広がっていくのだけど、読み終わってみると、作中で描かれる事件の性質がちゃんと意味を持っている、というのに驚かされる。レンタル家族業を「社会貢献の一環」と言っている大家だけど、なぜかそれが社会貢献なのか? というものがある理由とかそういうのはしっかりと判明しるため。そうやって考えると、連作短編形式ではあるのだけど、長編としての構想というのもしっかりと練られているんだな、というのが良くわかる。
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