著者:遠田潤子


祖父、父と、日々女を連れ込む「たらしの家」と呼ばれる家で育った雅雪。全身に大火傷の後遺症を持ちながらも、庭師として働く彼は、両親のいない少年・遼平の世話を日々している。遼平の祖母からは屈辱的な扱いをされながらも……。その理由は、ある事件の贖罪のためで……
という風に文庫裏表紙に書かれている粗筋を(自分なりに)アレンジしたものを書いて、それを踏まえて読むとまたちょっと、印象が変わるな、というのを書いていてちょっと思いった。
というのも、物語が始まると、「これは一体、どういう物語なのだろう?」という感じで始まるため。庭師として働いている雅雪。そんな雅雪の元へ、遼平という少年が問題を起こしたという連絡が入り、そこへ駆けつける。遼平はケガをしており、しかし、なぜか雅雪に対して反抗的。さらに、その祖母も雅雪を罵っており……。そういうところで、遼平やその祖母に対して、頭が上がらない何かがあるのだろう、とか、そういうのはわかるのだけど、全体像は見えない。そして、その全体像が見えない中で、物語が進展していく。
そうやって読み進めながら、だんだん、粗筋に書いたように、雅雪は遼平の両親の死に何かかかわっていて、その贖罪として遼平のそばにいる。だが、遼平自身が、雅雪との距離を測りかねている部分があり、トラブルも起こしている。それだけでなく、雅雪をめぐり、周囲の人間関係もおかしなことになっている、ということ、さらに間近に迫った「13年」という節目に向けて雅雪が何かを考えている、ということも……。そうやって、だんだんと雅雪、遼平という二人をめぐる状況が明かされていく。
で、とにかく中盤くらいまでは、ただ雅雪が置かれた状況が「苦しい」という印象になるのだけど、読み進めるうちに、その環境の面倒くささ、というのが明らかになってくる。雅雪が生まれ育った家庭の環境。13年前に雅雪が出会った兄妹。その中で起きた事件。事件の後に雅雪が決断したこと。それぞれが、自分の中だけで物事を抱え込み、その結果、として掛け違いがが生じていき、誤解が誤解を招く悪循環へと陥っていく。その結果、全てがおかしな方向へと歪んで……
雅雪と父・祖父との関係性が生んだすれ違い。贖罪として始めた雅雪の行動。しかし、その中にあった雅雪自身の楽しみ。しかし、その一方での問題。これらが終盤、一気に晴れていく、というのは爽快の一言。まぁ、現実的に考えると、上手くいきすぎ、という気がしないでもないのは確かとしても。
読んでいて、途中までは本当に欝々とする。でも、だからこそ、それらが晴れる終盤が心地よい。
No.6480

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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祖父、父と、日々女を連れ込む「たらしの家」と呼ばれる家で育った雅雪。全身に大火傷の後遺症を持ちながらも、庭師として働く彼は、両親のいない少年・遼平の世話を日々している。遼平の祖母からは屈辱的な扱いをされながらも……。その理由は、ある事件の贖罪のためで……
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というのも、物語が始まると、「これは一体、どういう物語なのだろう?」という感じで始まるため。庭師として働いている雅雪。そんな雅雪の元へ、遼平という少年が問題を起こしたという連絡が入り、そこへ駆けつける。遼平はケガをしており、しかし、なぜか雅雪に対して反抗的。さらに、その祖母も雅雪を罵っており……。そういうところで、遼平やその祖母に対して、頭が上がらない何かがあるのだろう、とか、そういうのはわかるのだけど、全体像は見えない。そして、その全体像が見えない中で、物語が進展していく。
そうやって読み進めながら、だんだん、粗筋に書いたように、雅雪は遼平の両親の死に何かかかわっていて、その贖罪として遼平のそばにいる。だが、遼平自身が、雅雪との距離を測りかねている部分があり、トラブルも起こしている。それだけでなく、雅雪をめぐり、周囲の人間関係もおかしなことになっている、ということ、さらに間近に迫った「13年」という節目に向けて雅雪が何かを考えている、ということも……。そうやって、だんだんと雅雪、遼平という二人をめぐる状況が明かされていく。
で、とにかく中盤くらいまでは、ただ雅雪が置かれた状況が「苦しい」という印象になるのだけど、読み進めるうちに、その環境の面倒くささ、というのが明らかになってくる。雅雪が生まれ育った家庭の環境。13年前に雅雪が出会った兄妹。その中で起きた事件。事件の後に雅雪が決断したこと。それぞれが、自分の中だけで物事を抱え込み、その結果、として掛け違いがが生じていき、誤解が誤解を招く悪循環へと陥っていく。その結果、全てがおかしな方向へと歪んで……
雅雪と父・祖父との関係性が生んだすれ違い。贖罪として始めた雅雪の行動。しかし、その中にあった雅雪自身の楽しみ。しかし、その一方での問題。これらが終盤、一気に晴れていく、というのは爽快の一言。まぁ、現実的に考えると、上手くいきすぎ、という気がしないでもないのは確かとしても。
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