著者:日日綴郎


「あ、あのね原田くん。……私と一緒にお弁当……食べない?」 藤森高校ラグビー部主将・原田伊織。花園を目指し、練習に励む彼は、クラスメイトで学校でも評判の美少女・瀬尾小春に声を掛けられる。戸惑いながらも浮かれる伊織だったが、いざ口にしてみると、衝撃的に不味くて……
第10回講談社ラノベ文庫新人賞・佳作作品。
うん、これは良い青春モノ。
粗筋で書いたように、ラグビー部の主将として、花園を目指し、周囲からはゴリラと呼ばれるような伊織。そんな伊織が、学校一の美少女と評判で、ピアニストとして音大を目指している、という小春から、手作りの弁当を一緒に食べてほしい、と言われるところから物語が開幕。ある意味で、朴念仁というか、周囲の空気を読まない伊織は、小春の弁当を食べて当然のように「不味い!」と一言。それで嫌われるのか、と思いきや、だからこそ美味くなるように食べてほしい、と頼まれることに。
最初は、練習に明け暮れ、そして、小春の不味い弁当を食べる、というような描写で進んでいくのだけど、そんな中でなぜ、指を傷つけてはいけないピアニストの小春が料理に挑戦しているのか? なぜ、彼女の作る料理は不味いのか? なんていう謎が明らかになっていく。そして、そんなやり取りの中で二人の距離も縮まっていくのだが……
本当に、真面目に花園……つまり、全国を目指すラグビー部の中でのイザコザ。伊織が、小春のことを意識するようになったからこその忖度と、それをしたが故に生まれてしまう事件……。後半は、文字通りに怒涛の展開になっていくのだけど、最初の段階から「あれ?」と思うような設定が、しっかりと意味を為していることが分かる、という見事な伏線回収に感服。
本当、主人公である伊織のキャラクター性というのが物語にとって、すごく大事だ、というのを感じる。先に、朴念仁、空気を読まない、みたいに書いたけど、花園を目指すにあたってある意味ではきめ細かく、ある意味では口うるさく部内では周囲にあたる。そんな伊織の言動が原因で、退部してしまった部員も数多くいるし、チームのエースである後輩・倫太郎とは衝突してばかり。無論、それは小春の料理に対しても……。でも、だからこそ信頼できる、とも言われているし、それが揺らいだ時に……ともなる。この辺りの描写が非常に丁寧で、だからこそ、伏線回収などにも寄与する。
物語として面白いし、完成度も非常に高い作品。
No.6495

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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「あ、あのね原田くん。……私と一緒にお弁当……食べない?」 藤森高校ラグビー部主将・原田伊織。花園を目指し、練習に励む彼は、クラスメイトで学校でも評判の美少女・瀬尾小春に声を掛けられる。戸惑いながらも浮かれる伊織だったが、いざ口にしてみると、衝撃的に不味くて……
第10回講談社ラノベ文庫新人賞・佳作作品。
うん、これは良い青春モノ。
粗筋で書いたように、ラグビー部の主将として、花園を目指し、周囲からはゴリラと呼ばれるような伊織。そんな伊織が、学校一の美少女と評判で、ピアニストとして音大を目指している、という小春から、手作りの弁当を一緒に食べてほしい、と言われるところから物語が開幕。ある意味で、朴念仁というか、周囲の空気を読まない伊織は、小春の弁当を食べて当然のように「不味い!」と一言。それで嫌われるのか、と思いきや、だからこそ美味くなるように食べてほしい、と頼まれることに。
最初は、練習に明け暮れ、そして、小春の不味い弁当を食べる、というような描写で進んでいくのだけど、そんな中でなぜ、指を傷つけてはいけないピアニストの小春が料理に挑戦しているのか? なぜ、彼女の作る料理は不味いのか? なんていう謎が明らかになっていく。そして、そんなやり取りの中で二人の距離も縮まっていくのだが……
本当に、真面目に花園……つまり、全国を目指すラグビー部の中でのイザコザ。伊織が、小春のことを意識するようになったからこその忖度と、それをしたが故に生まれてしまう事件……。後半は、文字通りに怒涛の展開になっていくのだけど、最初の段階から「あれ?」と思うような設定が、しっかりと意味を為していることが分かる、という見事な伏線回収に感服。
本当、主人公である伊織のキャラクター性というのが物語にとって、すごく大事だ、というのを感じる。先に、朴念仁、空気を読まない、みたいに書いたけど、花園を目指すにあたってある意味ではきめ細かく、ある意味では口うるさく部内では周囲にあたる。そんな伊織の言動が原因で、退部してしまった部員も数多くいるし、チームのエースである後輩・倫太郎とは衝突してばかり。無論、それは小春の料理に対しても……。でも、だからこそ信頼できる、とも言われているし、それが揺らいだ時に……ともなる。この辺りの描写が非常に丁寧で、だからこそ、伏線回収などにも寄与する。
物語として面白いし、完成度も非常に高い作品。
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