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PUZZLE 東京駅おもてうら交番 堀北恵平

著者:内藤了



年の瀬が迫り、人の流れも慌ただしくなる東京駅。そんなとき、恵平が出会ったのは、スーツケースを置き引きしてしまったという老人。交番へと案内する恵平だったが、そこから出てきたのは切断された男性の胸部。さらに、都内各所でバラバラにされた遺体が次々と発見されて……
堀北恵平シリーズ第3作。
タイトルの「パズル」という言葉がしっくりと来る。そんな物語だったな、という印象。
冒頭に書いたように、置き引きをしてしまった、という老人が持ってきたスーツケースから発見された男性のバラバラ遺体(の一部) 被害者は、冷凍された上でマグロの解体よろしく、電動の切断装置で切り刻まれていた。犯人は一体、何者なのか? そんなところから始まった事件は、これをきっかけに堰を切ったかのようにバラバラ遺体が発見されていく。だが、その遺体は最初の男性のものだけでなく、白骨化した女性の遺体など、別の人物のものまで……
当初の、男性の遺体がバラバラに、という状況から、まったく違うような事件にまで繋がっていく。しかし、タイミングなどを考えても、それらにつながりがあるとは考えづらい。その全体図は一体何なのか? そんな謎が物語を引っ張っていく。
その中で、今回は、新登場の水品刑事が言うように「堀北恵平って、本当に研修中の見習いなの?」というような活躍っぷりが光る。前作と同様、今回も鑑識の研修中という状況なのだけど、遺体切断に使われた機器などを調べたり……から捜査が始まっていくのだけど、これまでの2作同様、東京駅で暮らすホームレスたちとの繋がり、というものを存分に生かしていく。歩き方とか、そういうところで人の職業とか、そういうのまで見抜いてしまうペイさん。さらに、そこからの紹介で、今はホームレス化も知れないが、それぞれが専門的な知識を持った人々につなぎをつけ、謎を解明していく。以前の藤堂比奈子とか、本作で恵平とコンビを組む平野とかも優秀なんだけど、東京駅の交番で、ホームレスといえども真正面から接しているからこその信頼を得ているとか、この作品ならではのアプローチがすごく心地よい。事件そのものはかなり凄惨なものだけど。
そして、その事件の真相は……
著者の作品、特にこの角川ホラー文庫から刊行されているものって、犯人が狂気を孕んでいて、というのが多いのだけど、本作の場合は犯人の苦しみ、というのも印象的。ごくごく真面目に働いてきた犯人を襲った悲劇。そして、その犯人のよりどころであった場所がよりにもよって……。後味が良いわけではない、というのは同じなのだけど、理解できないからではなく、理解できるからこその苦さが印象に残る。

No.6498

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Tag:小説感想内藤了

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