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バッドルーザー 警部補 剣崎恭弥

著者:柏木伸介



横浜市保土ヶ谷区で、生活保護受給者が狙われる連続殺人が発生。世間の批判が集まる中、保土ヶ谷署に所属する剣崎恭弥もまた特命班として捜査に加わることに。事件に関する情報提供を募る剣崎だったが、過去の事件で兄を射殺してしまった強盗犯が刑期を終え、出所したことをする。さらに、誘拐事件、警官襲撃事件まで発生して……
剣崎恭弥シリーズ第2作。
前作は、完全に剣崎の独断専行が中心になっての捜査だったのだけど、今回の剣崎は普通に捜査をしているんだよな……。ただ、その中で、過去の剣崎の行為のツケを払わせよう、という面々が加わることで厄介なことになる、という感じ。
冒頭に書いたように、生活保護受給者連続殺人の捜査に特命班班長として加わることになった。しかし、独断専行癖のある剣崎を上司は忌み嫌い、班員の中には剣崎を敵視する者も。それでもおとなしく自分の役目に従事するが、班員の中から剣崎を出し抜いてやろう、という者が現れる。さらに、神崎に恨みを抱く美作二郎は、神崎を狙って動き出す。その他に、ある犯罪計画を立てている高校生たちもいて……
区役所の生活保護を担当する部署とのやりとり。情報提供の電話番。そんな地味な捜査を続ける剣崎と、その裏で着々と進む剣崎を巡っての陰謀と、それとは別の犯罪計画。中盤までは淡々と物語が進んでいくのだけど、作中の最終日に一気に事件が動き始めて……
誘拐事件。警官襲撃事件。高校生たちの犯罪計画。部下の反乱。それらが一気に爆発する中で、周囲に振り回されながらも、そこまでの捜査などの中で知った知見をもとに、一つ、また一つ真相に迫っていく剣崎。中盤までが地味なだけに、最終日の一気呵成の展開が楽しい。
そして、もう一つのポイントが、本作のテーマと言えるだろう数字のマジック。
生活保護という問題にしても、警官が襲撃された理由にしても、高校生たちの計画の根源にしても存在するのがそれ。一生懸命に問題を掘り起こして……とやればやるほど、数字が大きくなってしまう。その結果、救われる人間が増える、ということが言えるのではあるけど、数字が多い、ということ自体を問題視する者すら現れる。本作では描かれていないけど、例えば、学校における校内暴力とか、イジメの問題とかでも、同じような部分があって、「校内暴力が増えたのは、スマホやゲームで子供が暴力的になったからだ」みたいな説とかしばしば目にするからなぁ……。その部分について、掘り下げて社会問題がどうのとか、そういう話ではなく、さらっと描かれるだけなのだけど、自分が興味を持っている部分だけあって印象に残った。

No.6501

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Tag:小説感想柏木伸介

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