著者:荻原浩


今朝の会議は憂鬱。こんな生活、いつまで続けるんだ? そんなことを考え、つい乗ってしまった職場とは反対方向へ向かう急行列車。次々と過ぎていく駅を見ながら、「ろくでもない日常からの脱出」とサボりを決めた野崎は、終点から山へ向かい、戻ってくると……。似ているが何か違っている。そんな似て非なる別世界へと迷い混んでいて……
正直なところ、これはまた、何とも感想の書きづらい物語。
冒頭のあらすじでも書いたように、会議に出たくなくて、逆方向の列車に乗り、辿り着てしまったのは異世界……というか、パラレルワールド。
現実の世界がそうであるように、新型コロナウィルスが蔓延し、列車やらの中ではマスク着用が必至という状況から辿り着いたのは、同じようにウィルスが蔓延しているものの、微妙に違った世界。マスクをしなければダメ、ではなく、マスクをしたらダメ、というような逆の価値観になっていて、ある動物が絶滅していた。そして、妻との関係も……。仕事などでは現実よりも良い状態だが、しかし、何か窮屈な世界。そんな世界から、元の世界へ……と考えるが、さらに違った世界へと移動して……
作中で何度も語られる言葉、「現在は過去の選択の結果」。
勿論、パラレルワールドにおける常識とか、そういうのがわからないままに放り込まれる、っていう部分はあるのだけど、過去の積み重ねだからこそ、そこになかなか馴染めない。だからこそ、違和感を強く感じるし、物語冒頭であれほど嫌がっていた本来の自分の世界へと戻りたい、という気持ちになっていくのは説得力があった。そして、紆余曲折の末、野崎は自分の世界に戻ってきた……と思いきや……?
なるほど、そういうオチか!
正直なところ、パラレルワールドの現状とかが描かれ、そこからの脱出を、という流れが続くので、先に書いた野崎の心情とかはともかく、それ以外の主題がちょっとわかりづらいと感じる部分がなかったわけではない。けれども、最後の最後に、そのオチを用意することによって読者が野崎の感じていた違和感に完璧に共感できる、という形に昇華しているのが何よりも上手いと感じた。
No.6536

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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今朝の会議は憂鬱。こんな生活、いつまで続けるんだ? そんなことを考え、つい乗ってしまった職場とは反対方向へ向かう急行列車。次々と過ぎていく駅を見ながら、「ろくでもない日常からの脱出」とサボりを決めた野崎は、終点から山へ向かい、戻ってくると……。似ているが何か違っている。そんな似て非なる別世界へと迷い混んでいて……
正直なところ、これはまた、何とも感想の書きづらい物語。
冒頭のあらすじでも書いたように、会議に出たくなくて、逆方向の列車に乗り、辿り着てしまったのは異世界……というか、パラレルワールド。
現実の世界がそうであるように、新型コロナウィルスが蔓延し、列車やらの中ではマスク着用が必至という状況から辿り着いたのは、同じようにウィルスが蔓延しているものの、微妙に違った世界。マスクをしなければダメ、ではなく、マスクをしたらダメ、というような逆の価値観になっていて、ある動物が絶滅していた。そして、妻との関係も……。仕事などでは現実よりも良い状態だが、しかし、何か窮屈な世界。そんな世界から、元の世界へ……と考えるが、さらに違った世界へと移動して……
作中で何度も語られる言葉、「現在は過去の選択の結果」。
勿論、パラレルワールドにおける常識とか、そういうのがわからないままに放り込まれる、っていう部分はあるのだけど、過去の積み重ねだからこそ、そこになかなか馴染めない。だからこそ、違和感を強く感じるし、物語冒頭であれほど嫌がっていた本来の自分の世界へと戻りたい、という気持ちになっていくのは説得力があった。そして、紆余曲折の末、野崎は自分の世界に戻ってきた……と思いきや……?
なるほど、そういうオチか!
正直なところ、パラレルワールドの現状とかが描かれ、そこからの脱出を、という流れが続くので、先に書いた野崎の心情とかはともかく、それ以外の主題がちょっとわかりづらいと感じる部分がなかったわけではない。けれども、最後の最後に、そのオチを用意することによって読者が野崎の感じていた違和感に完璧に共感できる、という形に昇華しているのが何よりも上手いと感じた。
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