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七日の夜を抜け出して

著者:逆井卓馬



12年前、神隠し事件が起きている遊辺高校。新入生である中里蓮は、その事件を調べている「頂上探求部」の部室を訪れる。だが、部室にいたのは蓮と同じ、新入生だけ。そして、超常の力によって、4人は部室に閉じ込められてしまう。そこから脱出するには、七不思議を解明する必要があるのだが……
ということで、部室棟から出るために、その超常現象の正体、解除方法を探り、それを実行していく、という物語。青春ミステリという形ではあるが、超常現象の存在が前提となっての物語となっている。
まず、閉じ込められた面々としてはとにかく、「公平」にこだわる主人公の蓮。作中でも言われるように、「昔ながらのツンデレ少女」な紫苑。超常の存在を「視る」ことができるオカルトマニアの田子。そして、高校1年でありながら、その超常を退治する、という仕事をしている北別。以上の4人。それぞれ、価値観とかが違い、偶然、居合わせただけで決して話が通じるわけでもない。けれども、そんな4人が力を合わせて……ということに。
この話、テーマの一つが「常」とか、「常識」と言ったものなのだろう、と思う。「超常」っていうのは、「常を超えた」現象。つまり、「常」があっての「超常」。でも、その「常」というのが実は曖昧。例えば、出てくる超常は、何らかの無念を抱えた人の想いとか、そういうものが具現化したもの。だからこそ、そんな超常のキーとなるものを大切にしたい、と思う蓮に対し、北別はあっさりと破壊してしまう。それはいくら何でも……読者としてもそう思うのだけど、北別は超常との戦いなども経験をしている人間。その危険性は何よりも理解している。まして、タイムリミットもある中、悠長にその願いを……なんてやっていられない。北別にとっては、即座に処分する。それが「常識」。そういったぶつかり合いなどが多く描かれ、その「常」がどこまで「常」なのか? というのを考えさせられる。
そして、主人公である蓮の「公平」を求め続ける態度の裏にあるものも、彼のおかれた状況から出てくる。さらに、最後の、最強の「超常」の正体を明かすときにも……。「常」というのは、ある意味では、その人本人の中にあるもの。だからこそ、それが他者とつながった時に差異が明らかになっていく。特殊な設定、特殊な面々が揃った物語ではあるが、だからこそ、そんな面を強く感じられた。

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Tag:小説感想逆井卓馬

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