fc2ブログ

Vのガワの裏ガワ2

著者:黒鍵繭



クラスメイトである果澪の抱えた問題は解決。人気VTuber「雫凪ミオ」としての活動も再開することに。そんな中、高校生イラストレーターの千景は、活動の幅を広げるためにも、マネージャーを雇うか、事務所に所属したい、という相談を受ける。話し合いの末、千景はVTuber事務所を運営する知人・寿花峰に話を聞くことに。ところが、そこで千景は、事務所所属のVTuber・金剛ナナセのマネージャーを夏休み期間限定でやってほしいと言われ……
ということで、今回は金剛ナナセというVTuberを巡っての物語。その魂は、千景の通う高校の生徒会役員である世良夕莉。マネージャーとして、8月31日までの、登録者数10万人を目指すことに。
そもそもの問題として、千景としては、果澪を事務所に入れるかどうか、という相談をするための相談。マネージャーと言っても、千景はイラストレーターであり、知識も何もあったものではない。何より、ナナセを支える必要はないはず。けれども……という辺りは、やっぱり千景の「お人よし」っぷりというのが現れているよな……。それでも、ナナセのモデリングとか、イラストを描く、というのはナシという方針でマネージャー業をすることに。
そんなナナセというか、夕莉。元々はアイドルを目指し、芸能事務所にも入っていたという彼女は、文字通りにプロフェッショナル。普段の本人は、周囲に厳しい生徒会の人間。しかし、いざ、VTuberとしてのキャラクターに徹し、きめ細かく視聴者との対話なども行う。そして、配信の話題作りなどに対しても真摯に取り組んでいる。その姿勢は見事の一言。しかし、その一方で、彼女が8月中に10万人の登録者にこだわる理由は何なのか? というような疑問も残る。例えば、イラストレーターである千景が納期までに仕事を完成さねばならない、というのは当然のこと。しかし、配信を続ける中で着実に登録者を増やしている状況。10万人に達するのが多少遅れたところで、何も問題はないはず……その理由は……
この辺り、芸能人とかもそうなのだけど、その存在の難しさ、というのを感じるよな。例えば、学校の勉強とか、スポーツとか、そういうものでも全くないわけじゃないのだけど、でも、日々、努力をしていればある程度は成果というのが出る。しかし、芸能などは、あくまでも他者が判断するもの。それも、点数とかのように客観的に目に見える形で成果が出るわけでもない。何もしなくとも、突如、人気になる者もいれば、ストイックにやっていても人気が出ないものがいる。それが作中でいわれる「華」ということになるのだろうけど、自分でコントロールできるものではない、というもどかしさがそこにある。そして、事務所は「商売」としてやっているわけで……その中で植え付けられてしまうもの。
1巻のVTuberを立ち上げて、という話とは趣が異なるけど、ある意味ではVTuberの現実という意味では、こちらの方があり得る話なのだろうな。

No.6547

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想MF文庫J黒鍵繭

COMMENT 0