著者:城平京


シリーズ第6作となる短編集。全5編を収録。
今回は、タイトルにあるように「密室」を題材にしたエピソードが中心。当然、物語の前提となる妖怪とか、そういうものは密室というものについてあまり意味を為していないため、物語の中心は人間側の事情が中心ということになる。
1編目『みだりに扉を開けるなかれ』。とある事件を解決し、その顛末を九郎に語る琴子。そこで語られるのは、密室殺人と、その台無しにする妖怪たちの悪戯……。1編目から17頁ほどの掌編ではあるのだけど、苦労して作った密室を悪戯で台無しにされたら、犯人としてはやり切れないよなぁ。ただ、犯罪の真相をわかりやすくする、という意味ではその悪戯はむしろ正義に貢献しているようにも思えるのだけど、そうすると人間の秩序が乱れるからと駆り出された琴子。なんか、色々とねじ曲がっている立ち位置が印象的。
そして、その1編目ともかかわりのある3編目『かくてあらかじめ失われ……』。首つり自殺を装っての殺人。犯人は、偽の遺書を現場に残し、密室状態にして立ち去った。しかし、妖怪が、その密室を台無しにし、遺書まで持ち去ってしまった。こうして、妖怪は犯人が困惑する様子を楽しもうとしたのだが、犯人はなぜか「計画通り」と喜びだしたという。琴子は困惑した妖怪側の相談については、説明をしたのだが、そんな中にモヤモヤとする存在がいて……
前半の「計画通り」とした犯人の理由についてだけでも1つのエピソードとして成立しているような気がするのだけど、問題はその裏での物語。隣人同士の複雑すぎる関係性。そこに巻き込まれた少年少女の想い……。そのあまりにもドロドロとした状況と琴子が喝破した真相は果たして「これで良いのか?」と思わせてくれる結末。
5編目『飛島家の殺人』。一代で財を成した女性・飛島龍子。政財界にも大きな影響力を持っていたが、40年前に、腹心女性の失踪と、直後の夫の事故死が起きて以降は常にヴェールを身にまとい、表舞台から降りて、隠遁生活を続けている。なぜ、龍子はヴェールを身にまとっているのか? 龍子の息子と孫娘は、龍子の夫が腹心を殺害したとみているのだが……
この話は妖怪が関わらない話だったりする。そして、龍子の夫が腹心女性を殺害した、という場合に残る、曖昧なアリバイ状況のトリック解明から始まって、思ぬ方向の真相の示唆へ……。成功をし、より……という人もいるだろう。しかし、成功をすればそこには同時に大きなプレッシャーやら、多忙さやらがやってくる。そんなときに、琴子が考えたことが起きていたら……それはわかるような気がする。ただ、どちらにしても仮説以上ではないのだが。
この作品は前提として、あくまでも「納得できれば良い」というのがある。なので、真相は闇の中でも構わない、ということになる。今作は、そんな真相は闇の中、で終わるがゆえに何かモヤモヤとした部分が残るエピソードが多かったように感じる。
No.6552

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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今回は、タイトルにあるように「密室」を題材にしたエピソードが中心。当然、物語の前提となる妖怪とか、そういうものは密室というものについてあまり意味を為していないため、物語の中心は人間側の事情が中心ということになる。
1編目『みだりに扉を開けるなかれ』。とある事件を解決し、その顛末を九郎に語る琴子。そこで語られるのは、密室殺人と、その台無しにする妖怪たちの悪戯……。1編目から17頁ほどの掌編ではあるのだけど、苦労して作った密室を悪戯で台無しにされたら、犯人としてはやり切れないよなぁ。ただ、犯罪の真相をわかりやすくする、という意味ではその悪戯はむしろ正義に貢献しているようにも思えるのだけど、そうすると人間の秩序が乱れるからと駆り出された琴子。なんか、色々とねじ曲がっている立ち位置が印象的。
そして、その1編目ともかかわりのある3編目『かくてあらかじめ失われ……』。首つり自殺を装っての殺人。犯人は、偽の遺書を現場に残し、密室状態にして立ち去った。しかし、妖怪が、その密室を台無しにし、遺書まで持ち去ってしまった。こうして、妖怪は犯人が困惑する様子を楽しもうとしたのだが、犯人はなぜか「計画通り」と喜びだしたという。琴子は困惑した妖怪側の相談については、説明をしたのだが、そんな中にモヤモヤとする存在がいて……
前半の「計画通り」とした犯人の理由についてだけでも1つのエピソードとして成立しているような気がするのだけど、問題はその裏での物語。隣人同士の複雑すぎる関係性。そこに巻き込まれた少年少女の想い……。そのあまりにもドロドロとした状況と琴子が喝破した真相は果たして「これで良いのか?」と思わせてくれる結末。
5編目『飛島家の殺人』。一代で財を成した女性・飛島龍子。政財界にも大きな影響力を持っていたが、40年前に、腹心女性の失踪と、直後の夫の事故死が起きて以降は常にヴェールを身にまとい、表舞台から降りて、隠遁生活を続けている。なぜ、龍子はヴェールを身にまとっているのか? 龍子の息子と孫娘は、龍子の夫が腹心を殺害したとみているのだが……
この話は妖怪が関わらない話だったりする。そして、龍子の夫が腹心女性を殺害した、という場合に残る、曖昧なアリバイ状況のトリック解明から始まって、思ぬ方向の真相の示唆へ……。成功をし、より……という人もいるだろう。しかし、成功をすればそこには同時に大きなプレッシャーやら、多忙さやらがやってくる。そんなときに、琴子が考えたことが起きていたら……それはわかるような気がする。ただ、どちらにしても仮説以上ではないのだが。
この作品は前提として、あくまでも「納得できれば良い」というのがある。なので、真相は闇の中でも構わない、ということになる。今作は、そんな真相は闇の中、で終わるがゆえに何かモヤモヤとした部分が残るエピソードが多かったように感じる。
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