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死亡遊戯で飯を食う。2

著者:鵜飼有志



「キャンドルウッズ」から3か月。幽鬼はプレイヤーとして復帰した。足元が不安な廃ビルから脱出する「スクラップビル」。そこに参加するプレイヤーたちは、「キャンドルウッズ」の後に入ってきたプレイヤーたちと共に攻略に動くことになるのだが……
という「スクラップビル」と、温泉を模した建物から、限られた人数だけが脱出できるサバイバルゲーム「ゴールデンバス」という二つのエピソードを収録。
この手の作品では珍しく、巻末に「これは、彼女らの日常を綴ったドキュメンタリーのような物語」という風にあるのだけど、確かに、という感じ。1巻の時は、その世界観がどういうもので、とか、そちらの方をメインに読んだのだけど、そういうルールとかを知った上で読むと、まさに彼女らの日常を描いた、という印象。
1編目の「スクラップビル」でともに脱出を目指すこととなるのは、高飛車なお嬢様・御城たち。人心掌握が巧みである御城は、今回が10回目という幽鬼に対して強い対抗意識を持ち、しかも、幽鬼のいう「10回目」という言葉も信じていない。参加者の中で孤立した状態から始まるゲーム。その中で、御城たちは幽鬼の目から見れば明らかに未熟。だが……
数多くの、過酷なゲームを経験してきたからこその直観を持つ幽鬼。しかし、それを言語として説明することは難しい。だからこそ、御城は対抗心を持ち、反発する。その構図。そして、ゲーム脱出の寸前になり、全てが幽鬼の言うとおりだったことが判明したときに。
そして、30回目の挑戦になった「ゴールデンバス」。心身とも絶不調な幽鬼。そんな状態でゲームに参加することとなったのだが、いきなり危機的状況になってしまう。しかも、敵対するチームを率いるのは10回目での因縁がある御城で……
(厳密には、不参加でも良いのだけど)プレイヤーとして行動をするにあたっては常に良いコンディションということはない。不調なときでも、なんていうのは、まさに「日常のドキュメンタリー」というような状況だし、その中で自分に対して対抗心を持つ存在が現れたりもする。これもまた、会社とかそういうの中での人間関係に通じるものがある。そんな物語の中で、高飛車なお嬢様として描かれていた御城の存在感がとにかく光っていたな、というのを思う。
勿論、デスゲームという題材の関係上、残虐な雰囲気は常に漂うのだけど、でも、その中でのカラーというのが強く感じられた。

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Tag:小説感想MF文庫J鵜飼有志

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