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黒いピラミッド

著者:福士俊哉



聖東大学エジプト研究室で起きた殺人事件。それは、若手講師の二宮が、犬の仮面を被って研究室へ乱入し、教授らを鉄パイプで殴打。そして、そのまま屋上から投身自殺する、というものだった。現場に居合わせた同期の講師・日下美羽は、その二宮が「黒いピラミッドが見える……あのアンクは呪われているんだ……」と口にするのを目撃していた。その「呪いのアンク」とは? それから、美羽の周りで奇妙な事件が起こり始め……
第25回、日本ホラー小説大賞・大賞受賞作。
最初に書くと……全4編構成の本作なのだけど、前半の2編が読みづらかった。
冒頭の粗筋では、事件が起こって美羽が、そのアンクのことを調べようとして……という風に書いたのだけど、実は序盤は色々な視点が次々と変わっていく。物語の最初は、春から大学院生になる予定で、講師の二宮と付き合っている女学生視点。その女学生視点が途中から事件を起こす二宮へ変わり、スキャンダル発覚から事件へ。そして、その最後の言葉を聞いた美羽へ……と繋がっていくのだが、すぐにやはり大学職員の矢野、さらに美羽の教え子である学生・花音視点へ。これが、章ごととかで視点の切り替わりがされているのだったらよかったんだけど、いきなり次の行で別の視点に切り替わったり……というのが多く、読みづらかった。ただ、そんな視点が美羽視点だけになる後半からは一気に読みやすくなった感じ。
ということで、まず感じた読みづらさ、というのを長々と書いてしまったのだけど、著者自身がエジプトの調査などに関わったことがある、というだけあって、そこで描かれている様々な蘊蓄とかは魅力的。エジプトの歴史とか、そういうことは言われているが、ヘロドトスとかも、ピラミッドが作られていた時代から数千年が経過した後のこと。歴史的に大きな影響をもたらしたナポレオンのものなど、さらにそこから二千年。つまり、歴史資料とはいえ、あくまでも古代遺跡を調べて「こうではないか?」というだけのこと。一体、本当はどういうことがあったのか? そんな歴史上の謎に取りつかれた、と言ってよい研究者たちの性ともいえるもの。そして、そういう謎だらけだからこそ、古代エジプトで信じられていた神話と、その神話から連なる呪いもまた実在するのではないか? というところへ飛躍という流れは面白かった。そんな中に、美羽だけでなく、調査中に死んだ美羽の父が作り出していた仮説なども絡んできて……
物語として、「呪い」という登場し、その「呪い」によって人々が狂気にまみれて死ぬ、なんていう部分はある。けれども、「呪い」を前提にして、美羽がエジプトへ向かい、そのアンクの正体を……という流れはむしろ冒険小説のような趣が強かったかな、という印象。一応、ホラー小説、として売り出されてはいるけれども、怖さとかよりも、冒険小説としてのワクワク感を楽しめた作品。ただ、序盤の部分は、もう少し改善してほしかったかも。

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Tag:小説感想福士俊哉

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