著者:竹町


死亡率9割を超える「不可能任務」に挑むチーム灯。フェンド連邦で経験した盟友の死、仲間の裏切りは彼女たちに大きな傷跡を残した。各々の心が揺れる中、もう一人、その心に傷を負った者が……。それは仲間を失ってしまったチーム鳳のラン。灯に寄生する存在となったランを追い出すため、メンバー全員で彼女の再就職先を探すことになり……
やっぱりこのシリーズにおいて、「鳳」という存在は大きいのだな、というのを感じる短編集4巻。
上に書いた粗筋では、鳳の生き残り・ランの再就職先を、という風に書いたのだけど、まずは、鳳から課せられた「課題」をこなす、という話。
1編目『case 養成学校』。鳳からの課題により、養成学校へと戻ることになったリリィとサラ。養成学校では落ちこぼれ、と言われていた二人。養成学校の学生たちは、当時とほぼ同じ。落ちこぼれ、と言われた彼女は成績上位者からのイジメの対象となり……。1巻の段階で、灯の面々は落ちこぼれ、ということは言われていたのだけど、そんなリリィたちの立場というのが改めて描かれた形。学校という狭い空間での成績上位者と落ちこぼれ。しかし、そんな学校内でのことなど現実の戦いを知っている者としては「甘い」ということを知っていて……。その辺りの、スッキリ感は流石。
一方の2編目『case 他スパイチーム』。チーム鳳・ファルマの兄が率いるチームに行くことになったグレーテ。そのファルマの兄ダグウィンは、そんなグレーテに対し、「自分の妹になれ」と要求するが……。過剰なまでのシスコンのダグウィン。ある意味、そんなダグウィンに媚びるような態度で接するグレーテだが、突如、「お前は妹じゃない」と言い出し……。まぁ、実際に妹じゃないしなぁ……。というのはあるのだけど、最初は滅茶苦茶に喜んでいた彼がなぜ、態度を急変させたのか? それは……
ある意味では、1編目と同じようなテーマが根底に流れている。スパイは常に死と隣り合わせ。だからこそ、自分にとって大事な存在には……。この作品はスパイという特殊な設定だけど、例えば、現実の世界でも危険を伴う仕事をしている人が……っていうのはよく聞くだけに、切実な話ではあるんだろうな。
『case スパイには縁遠い世界』 フェンド連邦での戦いを終え、療養中の灯。中でも重症なのは、裏切り者となったモニカ。用意された部屋に閉じこもり、アネットが攻撃を仕掛ける以外は誰も触れることができない。そんな中、ジビアは……
この作品の「常識人」ポジションと言えるジビア。モニカの想いとか、その一方での裏切りをしたことに対する罪悪感も覚えている。その状況をどうにか打破したい。そう思う彼女のやったことは……。幼い兄弟が数多くおり、その世話などをしているからこそ、クラウスにも思いつかなかった方法を実行できた。この話は素直に、ジビアの人の好さみたいなものが十分に描かれた話だったように感じる。
そして、表題作。ランの再就職先も決まった中、2編目でも登場したフェルマの兄ダグウィンがクラウスに戦いを挑む……
ダグウィンが戦いを挑んだ理由。それは、自身が言うように完全な八つ当たり。もし、クラウスが鳳のボスになっていれば……。クラウスがいようがいまいが、スパイは死と隣り合わせ。一つのチームを率いることだって大変な仕事。そんなことはわかっている。けれども、妹を喪ったやるせなさをぶつける先が欲しい。そんなダグウィンの悲しみ、そして、守れなかったクラウスの罪悪感。クラウスが負傷中とはいえ、互角に渡り合うダグウィンの強さとかも格好良かったし、だからこその傷を感じる。でも、そんな戦いを見てランは……
あとがきによると、今回のダグウィン関連は、アニメのシリーズ構成さんから「フェルマの掘り下げはないかのか?」というようなことを言われたことからのことなのだけど、この巻は、普段、本編では意識しづらいスパイの過酷さを、しっかりと意識させてくれる話になっていると感じる。
No.6559

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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死亡率9割を超える「不可能任務」に挑むチーム灯。フェンド連邦で経験した盟友の死、仲間の裏切りは彼女たちに大きな傷跡を残した。各々の心が揺れる中、もう一人、その心に傷を負った者が……。それは仲間を失ってしまったチーム鳳のラン。灯に寄生する存在となったランを追い出すため、メンバー全員で彼女の再就職先を探すことになり……
やっぱりこのシリーズにおいて、「鳳」という存在は大きいのだな、というのを感じる短編集4巻。
上に書いた粗筋では、鳳の生き残り・ランの再就職先を、という風に書いたのだけど、まずは、鳳から課せられた「課題」をこなす、という話。
1編目『case 養成学校』。鳳からの課題により、養成学校へと戻ることになったリリィとサラ。養成学校では落ちこぼれ、と言われていた二人。養成学校の学生たちは、当時とほぼ同じ。落ちこぼれ、と言われた彼女は成績上位者からのイジメの対象となり……。1巻の段階で、灯の面々は落ちこぼれ、ということは言われていたのだけど、そんなリリィたちの立場というのが改めて描かれた形。学校という狭い空間での成績上位者と落ちこぼれ。しかし、そんな学校内でのことなど現実の戦いを知っている者としては「甘い」ということを知っていて……。その辺りの、スッキリ感は流石。
一方の2編目『case 他スパイチーム』。チーム鳳・ファルマの兄が率いるチームに行くことになったグレーテ。そのファルマの兄ダグウィンは、そんなグレーテに対し、「自分の妹になれ」と要求するが……。過剰なまでのシスコンのダグウィン。ある意味、そんなダグウィンに媚びるような態度で接するグレーテだが、突如、「お前は妹じゃない」と言い出し……。まぁ、実際に妹じゃないしなぁ……。というのはあるのだけど、最初は滅茶苦茶に喜んでいた彼がなぜ、態度を急変させたのか? それは……
ある意味では、1編目と同じようなテーマが根底に流れている。スパイは常に死と隣り合わせ。だからこそ、自分にとって大事な存在には……。この作品はスパイという特殊な設定だけど、例えば、現実の世界でも危険を伴う仕事をしている人が……っていうのはよく聞くだけに、切実な話ではあるんだろうな。
『case スパイには縁遠い世界』 フェンド連邦での戦いを終え、療養中の灯。中でも重症なのは、裏切り者となったモニカ。用意された部屋に閉じこもり、アネットが攻撃を仕掛ける以外は誰も触れることができない。そんな中、ジビアは……
この作品の「常識人」ポジションと言えるジビア。モニカの想いとか、その一方での裏切りをしたことに対する罪悪感も覚えている。その状況をどうにか打破したい。そう思う彼女のやったことは……。幼い兄弟が数多くおり、その世話などをしているからこそ、クラウスにも思いつかなかった方法を実行できた。この話は素直に、ジビアの人の好さみたいなものが十分に描かれた話だったように感じる。
そして、表題作。ランの再就職先も決まった中、2編目でも登場したフェルマの兄ダグウィンがクラウスに戦いを挑む……
ダグウィンが戦いを挑んだ理由。それは、自身が言うように完全な八つ当たり。もし、クラウスが鳳のボスになっていれば……。クラウスがいようがいまいが、スパイは死と隣り合わせ。一つのチームを率いることだって大変な仕事。そんなことはわかっている。けれども、妹を喪ったやるせなさをぶつける先が欲しい。そんなダグウィンの悲しみ、そして、守れなかったクラウスの罪悪感。クラウスが負傷中とはいえ、互角に渡り合うダグウィンの強さとかも格好良かったし、だからこその傷を感じる。でも、そんな戦いを見てランは……
あとがきによると、今回のダグウィン関連は、アニメのシリーズ構成さんから「フェルマの掘り下げはないかのか?」というようなことを言われたことからのことなのだけど、この巻は、普段、本編では意識しづらいスパイの過酷さを、しっかりと意識させてくれる話になっていると感じる。
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