著者:櫛木理宇


L県正護市北区で起こった連続放火事件。事件はだんだんとエスカレートし、公民館への放火事件では死者まで出る惨事に。鳥越ら、県警捜査一課は、捜査を担当する正護北署へと向かうが、その翌日、今度はレイトショー上映の映画館が放火され、死者6人という大惨事になってしまう。北区区長は、IR構想の反対派の仕業だというのだが、この土地は、それ以外にも様々なしがらみがあって……
シリーズ第2作。
前作は、SNSを通じてのヘイトクライムなど、いかにも現代的な舞台設定だったのだけど、今作は田舎町の人間関係というような側面が強いな。
冒頭に書いたように、連続して起こる放火事件。最初は、火はつけたものの、怖くなったのか自分で消し止めていたものが、だんだんとエスカレート。死者を次々と出すような状態になっていく。そんな捜査を進める中で、街はIR構想を巡って二分。さらに、そんな街は、かつて街を守る英雄として消防団が神聖視されていた時代があった。だが、その消防団の中での不祥事、さらに、その中での人間関係の交錯というものがあったことが次第に明らかにされて行って……
なんか、この消防団を巡っての人間関係って、田舎の人間関係を強く意識させるものがあるなぁ……というのを、自分自身、田舎出身として思わずにはいられない。
市町村合併によってできた正護市。北区は、かつて、人口の少ない田舎町で近隣を担当する消防署から遠く離れており、火事から街を守るためには消防団が欠かせない存在。特に、そのリーダーであった篠井一平は父に続く「英雄」と呼ばれ、人々の尊敬を集める存在だった。だが……。一平の犯した犯罪。その中で台頭してきた現区長の南。篠井親子の中にあった葛藤に、狭い集団の中での主導権争い。さらに狭い田舎町だからこそのいつまで経っても消えないレッテル。そういうものがこれでもかと露になっていく。
田舎=狭い人間関係。それは当然のことなのだけど、じゃあ、その中で対立やら何やらがないのか、と言えばそんなことはない。むしろ、狭いからこそ生じるより濃密で、陰湿な対立。都会のように、例えば、職場を離れれば無関係みたいじゃないからこその陰湿さ、っていうのがすごく生々しい。事件に関わる、この土地の人々の中にある陰湿な人間関係の息苦しさが、何よりも印象に残った。
もっとも、犯人。その裏にいた黒幕に関しては、ちょっとあっさりな気はする。特に、黒幕に関してはやや後出し気味な部分を感じるところがあったし。
でも、この生々しい人間関係の状況は、非常に読みごたえがあった。
No.6595

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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L県正護市北区で起こった連続放火事件。事件はだんだんとエスカレートし、公民館への放火事件では死者まで出る惨事に。鳥越ら、県警捜査一課は、捜査を担当する正護北署へと向かうが、その翌日、今度はレイトショー上映の映画館が放火され、死者6人という大惨事になってしまう。北区区長は、IR構想の反対派の仕業だというのだが、この土地は、それ以外にも様々なしがらみがあって……
シリーズ第2作。
前作は、SNSを通じてのヘイトクライムなど、いかにも現代的な舞台設定だったのだけど、今作は田舎町の人間関係というような側面が強いな。
冒頭に書いたように、連続して起こる放火事件。最初は、火はつけたものの、怖くなったのか自分で消し止めていたものが、だんだんとエスカレート。死者を次々と出すような状態になっていく。そんな捜査を進める中で、街はIR構想を巡って二分。さらに、そんな街は、かつて街を守る英雄として消防団が神聖視されていた時代があった。だが、その消防団の中での不祥事、さらに、その中での人間関係の交錯というものがあったことが次第に明らかにされて行って……
なんか、この消防団を巡っての人間関係って、田舎の人間関係を強く意識させるものがあるなぁ……というのを、自分自身、田舎出身として思わずにはいられない。
市町村合併によってできた正護市。北区は、かつて、人口の少ない田舎町で近隣を担当する消防署から遠く離れており、火事から街を守るためには消防団が欠かせない存在。特に、そのリーダーであった篠井一平は父に続く「英雄」と呼ばれ、人々の尊敬を集める存在だった。だが……。一平の犯した犯罪。その中で台頭してきた現区長の南。篠井親子の中にあった葛藤に、狭い集団の中での主導権争い。さらに狭い田舎町だからこそのいつまで経っても消えないレッテル。そういうものがこれでもかと露になっていく。
田舎=狭い人間関係。それは当然のことなのだけど、じゃあ、その中で対立やら何やらがないのか、と言えばそんなことはない。むしろ、狭いからこそ生じるより濃密で、陰湿な対立。都会のように、例えば、職場を離れれば無関係みたいじゃないからこその陰湿さ、っていうのがすごく生々しい。事件に関わる、この土地の人々の中にある陰湿な人間関係の息苦しさが、何よりも印象に残った。
もっとも、犯人。その裏にいた黒幕に関しては、ちょっとあっさりな気はする。特に、黒幕に関してはやや後出し気味な部分を感じるところがあったし。
でも、この生々しい人間関係の状況は、非常に読みごたえがあった。
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