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さえづちの眼

著者:澤村伊智



3編を収録した短編集。一応、比嘉姉妹シリーズということで良いのかな?
1編目『母と』。悲惨な家庭環境に生まれ、不良行為に手を染めていた琢海。そんな琢海は、心配をした母によって、問題を抱えた少年少女を集めたグループホームを紹介される。嫌々ながらも、訪れたその施設だったが、だんだんとそこが自分の居場所と感じるようになっていくが……。だが、そこには奇妙なモノがおり、代表の鎌田は、それから守ってくれていることを知り……
結構、途中までの展開と、終盤でカラーが変わる話だな、という印象。前半は、社会問題とかを取り入れている著者らしい作風。問題を抱えた少年たちと、そんな心に問題を抱えた少年たちの心に住み着いていく怪異。勿論、怪異とかはフィクションとしても、それをうまくアクセントに使っている印象。しかし、比嘉真琴が介入をしてからは……。比嘉姉妹シリーズとして描かれる中で、ここまでイマイチ、存在感が薄かった存在の登場。そして、そこにあるのは、子育てと、その中で問われる親の側の葛藤へ……。人間の見栄とか、そういうものも絡んでの戦いは色々と考えさせられた。
2編目『あの日の光は今も』。父の残した旅館を受け継いで、その経営を続ける昌輝。彼は、少年時代、UFO騒動を引き起こした張本人だった。だが……
一緒にUFOを目撃した友人とその証言が異なり、あれは嘘だった、という疑念は今も尽きない。その真偽を求めて、彼の旅館に泊まるオカルトマニアは今も。そんな彼らを嫌悪しつつ、しかし、経営のためには断れない。そして、その周辺では死が溢れていて……
物語の時代背景。オカルトブームとか、そういうものの歴史などを説明しつつ、合理的な結論へ。ここまでは、ミステリ小説そのものなのだけど、その上でのオチが、ある意味、問答無用のもの。そこまでの端正な謎解きからのオチに思わず笑ってしまった。
3編目の表題作。都内ではあるが、山中にあるお屋敷に住み込みで働くことになった家政婦。そこで働くこととなった彼女は、そこで奇妙な出来事に遭遇する……
7割くらいは、この家政婦の手紙という形で綴られ、その上で後日談的にその一族の結末などが語られたところで、比嘉琴子が言うのは……。途中で起こる奇妙な出来事。2編目もそうなのだけど、一度は、合理的に謎解きがされたと思ったところでの琴子の一言と、その末の結末が衝撃的。
今回は、短編集ということもあってか、ひっくり返しの切れ味を追求したような感があるかな? という印象。

No.6602

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Tag:小説感想角川ホラー文庫澤村伊智

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