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罪の境界

著者:薬丸岳



「約束は守った……伝えてほしい……」 渋谷のスクランブル交差点で起きた無差別殺傷事件。自らも事件に巻き込まれ、重傷を負った明香里は、自分をかばって死亡した男性・飯山の最期の言葉が強く残る。一方、風俗情報のライターをしている省吾は、ふと目にしたテレビニュースから、犯人の小野寺は、自分とそっくりなのではと興味を持ち始めて……
うーん……ちょっと話が散らかってしまった感があるなぁ……
物語は無差別殺傷事件の被害者となってしまった明香里。そして、明香里の恋人である航平。そしてライターである省吾という3人の視点で綴られる。冒頭に書いた粗筋では、明香里が、自分をかばってくれた男性の最期の言葉が気になりその人生を調べ始める、という風に書いたのだけど、実はそれは中盤になってから。省吾の側は最初から、犯人・小野寺の人生を探るのだけど、明香里はまず、自分自身のことの話へ……
誕生日、恋人の航平と一緒に食事を、という約束をドタキャンされ、その結果、事件に巻き込まれた。体中に多くの傷痕が残り、事あるごとにその時のことがフラッシュバックする。仕事を辞め、実家へと戻ることになるが、家族もまた腫れ物に触れるような扱い。心配してくれるのはわかっている。しかし、家族のそういう扱いが余計なことに感じられ、自暴自棄に陥っていく。一方の航平もまた、自分がドタキャンしたことが原因とわかり、好きだったミステリ小説も読めなくなってしまう。そんな中、やはり自分は明香里を……とは思うものの、明香里は自分を拒絶し……。そんな描写が続く。犯罪被害者の苦しみ。支援する側とのギャップ。そういうものが描かれていく。そして、そこから立ち直ってから飯山の人生を探ることに……
加害者である小野寺。被害者である飯山。どちらもまた、つらい過去を背負っていた……
望まれずに生まれ、学校などにも通わせてもらえず、親の気分次第で暴力を振るわれた挙句に母親が失踪した、という小野寺。その姿は、省吾にとって自分の過去そのもの。基本的なルールすら知らず、文字の読み書きなどもままならない。そんなどん底の生活の中で、小野寺が目標としたものは……。一方の飯山。野球の強豪校に進んだが、事故によりその道を絶たれ、暴力事件を起こしてしまった飯山。その結果、親、親族からも縁を切られていた。しかし、飯山を知る者の印象は、親族の言葉とは真逆で……。広島の地で安定した飯山が、突如、仕事を辞め、東京へと移った理由とは? そんな謎と共に進んでいき……
タイトルの意味とか、そういう部分はしっかりと回収されている。されてはいるのだけど、序盤の明香里の苦悩とかが、途中からフェードアウトした感じだし、ネグレクトの問題とかが解決するわけではないのだけど、何かそういうのも有耶無耶にしたまま綺麗なオブラートに包んで終わった感じがする。リーダビリティは高いのだけど、ちょっとまとまりに欠けるような印象を受けた。

No.6607

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Tag:小説感想薬丸岳

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