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青のアウトライン 天才の描く世界を凡人が塗りかえる方法

著者:日日綴郎



何を描かせても「天才」と称される幼馴染・柏崎侑里。そんな彼女の描く絵に対する評価は、画家を志す小宮宗佑にとって喉から手が出るほどに欲しいものだった。ある時を境に、気の向いた時しか描かなくなってしまった一番近くで、一番遠い場所にいる侑里を追いかけ、宗佑は絵筆を握り続け……
第34回ファンタジア大賞・特別賞受賞作。
なんか、上に書いた粗筋だと、別の雰囲気みたいになるな。
一応、粗筋の通り、主人公である宗佑は、画家になりたい、という夢を持っており、そのために美大進学が目標。そして、そんな彼の幼馴染である侑里は、誰もが認める天才画家と言われる存在。しかし、破天荒で、周囲の思惑とかが嫌な彼女は、気の乗った時しか絵筆をとらない。そんな存在。そんな二人は、小学生時代、詩子という友達がおり、宗佑は彼女に心を惹かれていたが、転校してしまい、現在は離れ離れ状態……。物語の設定というところから始まる。
物語とすれば、凡人……というか、常識人である宗佑、詩子と、天才である侑里。その関係性を巡る物語、という感じなのかな?
とにかく、物語の中盤くらいまでは、その対照的な姿が描かれていく。学校の進路相談では、「美大に行っても……」などと言われながらも、頑固にそれを貫くことを訴え、美術部の部長としてそちらの活動をする。学校からは、侑里にも絵を描かせろ、と言われいながら……。そんな侑里は、というと、絵筆などをとるつもりはなく、友人と合コンに行ったりとか、学校をさぼって宗佑の家でゲームをしていたりとか、そんな日々……。だからこそ、宗佑にとっては、侑里の行動に苛立ち、でも、そんな彼女に憧れ……。そんなとき、モデルをしている先輩、さらに、離れ離れだけど、想いを抱いている詩子らとのやり取りの中で……
絵……というか、芸術というか……。そういうものについて、技術とか、センスとか、そういうものは確実にある。でも、同時にそれを鑑賞する側が、どう捉えるのか、というのはまた別物。結局、センスとかでは……と思う宗佑と、そんな宗佑の一途な性格と、彼が描く絵の魅力というのを二人が示してくれて……。その関係性って言うのが綺麗に描かれた作品だな、と感じる。
決して、大逆転とか、そういう話ではないのだけど、だからこそ地に足の着いた、そんな物語だと感じた。
著者の最近の作品を読む中で、本作の評価がすごく高いのを目にしていたのだけど、なるほど、納得、という感じ。

No.6611

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Tag:小説感想富士見ファンタジア文庫日日綴郎

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