著者:斜線堂有紀


全6編を収録した短編集。
1編目である表題作。付き合っていた初露の遺体を盗んだ、として逮捕された律。律は、自分が盗んだことを素直に認めるものの、その遺体がどこにあるのか、についてはなかなか語らない。そんな彼女は、秋田県に突如出現した巨大な人型の物体「回樹」と関わっているらしく……。そんな物語は、律と初露の関係がどういうものであったか、という回想。秋田県に出現した「回樹」がどういうものなのか、という説明。そして、取り調べでの様子、というパートによって綴られていく。
学生時代のルームメイトから始まった同居。その中で関係性は、同居人から恋人に。だが、就職などを経て、二人の関係はすれ違っていく。その一方で、巨大な存在として登場した回樹がどういうものが明らかになっていて……。自分たちはどういう関係だったのか? 律の行動の源泉が切なかった。
骨に言葉を刻む技術が出来た、という2編目『骨刻』。骨に文字などを刻む。ある意味ではそれだけのもの。その文字を認識するには、レントゲン写真を撮るしかなく、外部からは何と書かれているのか判別することができない。タトゥーよりも、さらにわかりづらい、本人の自己満足ための、現在は禁止されてしまった技術……。物語としては、亡き祖母にそれが刻まれていて……という形で進むのだけど、そこで描かれる「骨刻」の広まり方が印象的だった。誰にも見られない、ということで、とある大富豪が遺言を自らの骨に刻んだ。それにより、自分が死ぬまで公開されることはない……と思ったら、のオチ。また、禁止のきっかけとなったのは、とある企業が、新入社員に自分の会社のロゴを「骨刻」せよとしていたこと……。なんか、日本でいかにもありそうな企業のやり方やら何やらが印象的だった。
個人的に、一番、面白かったのは『不滅』。宇宙港で、一人の元警察官がテロを起こした。その背景には……
物語の舞台としては、人が死ぬと、なぜかその身体はその状態で永遠に残る、という状態になってしまった世界。遺体は腐りもせず、火葬などもできない。死因を調べようにも、メスなどで解剖することすらできない。そうなると起こる問題は、死者をどう扱うのか、という問題。人間の身体が永遠に残る。そうなると、墓地に埋葬するにも、その墓地はすぐにいっぱいになってしまう。そんな中で、宇宙へと打ち上げて、という方法が脚光を浴びるのだが、しかし、その金額は高額。そんな中、低価格で……そんな業者が現れた。その業者が作った打ち上げ基地こそ、テロの現場……
これ、本当、人間の遺体がそのまま永遠と残るようになったら……と考えると色々と考えさせられる。現場となった場所の正体を考えると、結構、えげつない話ではある。でも、そういう世界において、合理性を追求したら……これもまた、となってしまうというのがシュールで考えさせられた。
No.6612

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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1編目である表題作。付き合っていた初露の遺体を盗んだ、として逮捕された律。律は、自分が盗んだことを素直に認めるものの、その遺体がどこにあるのか、についてはなかなか語らない。そんな彼女は、秋田県に突如出現した巨大な人型の物体「回樹」と関わっているらしく……。そんな物語は、律と初露の関係がどういうものであったか、という回想。秋田県に出現した「回樹」がどういうものなのか、という説明。そして、取り調べでの様子、というパートによって綴られていく。
学生時代のルームメイトから始まった同居。その中で関係性は、同居人から恋人に。だが、就職などを経て、二人の関係はすれ違っていく。その一方で、巨大な存在として登場した回樹がどういうものが明らかになっていて……。自分たちはどういう関係だったのか? 律の行動の源泉が切なかった。
骨に言葉を刻む技術が出来た、という2編目『骨刻』。骨に文字などを刻む。ある意味ではそれだけのもの。その文字を認識するには、レントゲン写真を撮るしかなく、外部からは何と書かれているのか判別することができない。タトゥーよりも、さらにわかりづらい、本人の自己満足ための、現在は禁止されてしまった技術……。物語としては、亡き祖母にそれが刻まれていて……という形で進むのだけど、そこで描かれる「骨刻」の広まり方が印象的だった。誰にも見られない、ということで、とある大富豪が遺言を自らの骨に刻んだ。それにより、自分が死ぬまで公開されることはない……と思ったら、のオチ。また、禁止のきっかけとなったのは、とある企業が、新入社員に自分の会社のロゴを「骨刻」せよとしていたこと……。なんか、日本でいかにもありそうな企業のやり方やら何やらが印象的だった。
個人的に、一番、面白かったのは『不滅』。宇宙港で、一人の元警察官がテロを起こした。その背景には……
物語の舞台としては、人が死ぬと、なぜかその身体はその状態で永遠に残る、という状態になってしまった世界。遺体は腐りもせず、火葬などもできない。死因を調べようにも、メスなどで解剖することすらできない。そうなると起こる問題は、死者をどう扱うのか、という問題。人間の身体が永遠に残る。そうなると、墓地に埋葬するにも、その墓地はすぐにいっぱいになってしまう。そんな中で、宇宙へと打ち上げて、という方法が脚光を浴びるのだが、しかし、その金額は高額。そんな中、低価格で……そんな業者が現れた。その業者が作った打ち上げ基地こそ、テロの現場……
これ、本当、人間の遺体がそのまま永遠と残るようになったら……と考えると色々と考えさせられる。現場となった場所の正体を考えると、結構、えげつない話ではある。でも、そういう世界において、合理性を追求したら……これもまた、となってしまうというのがシュールで考えさせられた。
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