fc2ブログ

正義の天秤 アイギスの盾

著者:大門剛明



師団坂法律事務所の刑事事件専門部署・ルーム1。元医師の経歴を持つ鷹野を筆頭に、そこに所属する弁護士は異色の経歴を持つものばかり。そんなルーム1に入る依頼に対して……
というシリーズ第2作となる連作短編集。全5編を収録。
1巻目が、どちらかというとルーム1の面々の紹介というような印象があったのだけど、今回も各エピソードで事件を担当する弁護士が別という形式をとっている。
1編目の表題作。杉村が担当することとなったのは、駅で女性を転落死させた、として逮捕された男。男は、駅でその女性と会っていたことを認めるものの殺人については否認。自分は無罪だ、というのだが……
面会に訪れた杉村が感じたのは、この男の口調にはある特徴があること。それは、主語を省いて癖があること。そして、それは興奮したりすればより悪化してしまう。「供述弱者」という言葉が出てくるのだけど、弱者、とまでは言わずとも、自分の意思を伝えるのが苦手な者がおり、裁判などにおいて不利になってしまう。それは、社会に馴染めず、引きこもっていた過去を持つ杉村自身にとっても感じることがあること。だからこそ、彼を守ることを決意し……。このルーム1の中でも、お調子者で、能力は低い、とされる杉村だけど、そんな彼の人間性とか、そういうのがしっかりと描かれた話になっていたように思う。
3編目『手のひらの楽園』。犬のブリーダーを殺害した、として逮捕された動物愛護団体の代表。代表は、被害者が動物を劣悪な環境で育てる存在として批判しており、そのトラブル故に、と言われていた。そんな事件を担当することとなったのは、元刑事の弁護士・梅津。
元刑事という経歴もあり、相手の情報とかを丹念に調べることが得意。代表が犯人ではないのならば……梅津は一つの仮説を立てるのだが……。大まかな構図は最初の想定通り。しかし、その中で一つ、大きく違っていたのは……。作中の、一つのやりとりによって、事件の構図が正反対にひっくり返る、という物語の構成が上手くはまったように思う。
そして、ルーム1のトップである鷹野自身の物語。
元々、医師であった鷹野が司法の世界へと移った理由となった一人の女性弁護士が殺害された事件。前巻から犯人の名前はわかっており、鷹野が復讐を目指していることも。そんな中での裁判。そこで鷹野が取った法廷戦術は……。このエピソードはひっくり返しとかよりも、鷹野自身の人間性とか、そういうものに重きを置いた話だと思う。鷹野の過去を知るルーム1の面々。鷹野はもしかして……そんなことを想定し、事実、鷹野自身もそういうことを考える。けれども最終的に決めたのは……
一つの区切りではあるけど、でも、何かしっくりとも来ない結末。3作目も出ているので、その辺りにもつながるのだろうけど……。あと、1巻目で出てきた、法律事務所の内部のアレコレとかも、3巻では出てくるんだろうか?

No.6628

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想大門剛明

COMMENT 0